HOME |日本製鋼材の強度不足が発覚したフランス原発。緊急点検で停止原発は20基に、さらに拡大へ。欧州全域で卸売電力価格上昇。徹底調査の仏当局に対し、大半の原発で同じ部材を使う日本では電力会社からの報告だけ。大丈夫か?(RIEF) |

日本製鋼材の強度不足が発覚したフランス原発。緊急点検で停止原発は20基に、さらに拡大へ。欧州全域で卸売電力価格上昇。徹底調査の仏当局に対し、大半の原発で同じ部材を使う日本では電力会社からの報告だけ。大丈夫か?(RIEF)

2016-11-07 21:57:53

franceキャプチャ

 

 原発設備の鋼材の強度不足懸念が発覚したフランスでは、検査のため停止する原発の数が、58基中、20基に達した。このため、欧州全体の電力需給が逼迫し、卸売電力市場の価格が上昇している。問題の部材には日本のメーカーのものが含まれており、再稼動した鹿児島の川内原発等を含めほとんどの原発に使われているが、日本での関心は薄い。

 

  問題の部材は、原発の蒸気発生器や原子炉圧力容器の鋼材で、基準値を超える炭素濃度が検出された。このため、原子力安全局(ASN)は、仏原子炉メーカーのアレバ社に調査を命じ、原発を保有するフランス電力会社(EDF)社保有の原子炉12基の運転の停止を命じたが、その後、停止対象は20基に増大している。http://rief-jp.org/ct4/65357?ctid=76

 

 ASNの会長は「不具合の広がりはまだ確定しておらず、もっと多くの問題点が検出されそうだ」と、原発停止の回復の見通しがまだ得られていないとの立場をとっている。ASNは58基の半分以上が炭素濃度の対応が必要と指摘しており、停止原発はさらに増えるのは必至だ。

 

 フランスの不具合原発の影響は、同国内にとどまらず、欧州全域に及んでいる。EU内では各国の電力網が相互接続されており、 9月のEDFの総発電量は1998年以来最低の26.6TWhに下がった。年間でも当初の395–400 TWhから 380–390 TWhへ減少しており、今後さらに減少する可能性があるという。

 

 フランスの原発電力の供給減はEUの卸売電力価格にも反映、2016年第四四半期、2017年第一四半期、2017年一年間の卸売価格は、それぞれ 1.70ユーロ/MWh、 1.65ユーロ/MWh、1.20ユーロ/MWhずつ上昇している。また電力供給不足に陥ったフランスへドイツが卸売電力を供給する形となっているため、ドイツの卸売電力価格も上昇しているという。

 

 フランスでは原発電力の減少分を、石炭火力などの再稼働や、電力輸入の増大でカバーしているという。このためパリ協定発効というタイミングで、実はフランスの石炭火力の発電量は32年ぶりの高い水準になっている。

 

 フランスで日本鋳鍛鋼製の鍛造部材を使った原発の蒸気発生器や原子炉圧力容器の鋼材からは、0.22%の基準を大幅に超える0.39%の炭素濃度が確認されている。日本鋳鍛鋼は1995年から2006年にかけてこれらの部材をフランスに供給したという。

 

 鋼材の炭素含有率が基準を超えている場合、部材の強度が脆弱となり、突然、破損したりするリスクがあるとされる。しかもそれらの部材が原子炉の中核部分で使われていたことから、ASNは徹底した調査を指示しているわけだ。

 

1.Progress? The Flamanville 3 project was originally expected to take 54 months to complete. It has been under construction for twice that time already, and costs have more than tripled to €10.5 billion. Although currently expected to reach commercial operation by the end of 2018, that timeline may be overly optimistic. Source: Autorité de Sûreté Nucléaire (ASN)

 

 日本では、1984年から1993年にかけて、日本鋳鍛鋼製の蒸気発生器の部材を高浜3、4号や、川内2号、敦賀2号、泊1、2号などに導入されたほか、同じくフランスで欠陥の可能性を指摘されている日本製鋼所の部材も他の原発に導入されている。しかし、原子力規制委員会は電力会社からのヒアリングだけで、「今の時点で急を要するようなものはない」として、詳細な調査を行っていない。

 

 フランスで今回の問題が発覚したのは、東電福島第一原発事故の後、既存原発を含めた安全対策を厳格に行った結果だった。そのきっかけとなった原発事故を起こした日本では、再稼働が優先され、安全性の徹底追求が後回しになっているかの構図が浮き上がる。

 

http://www.powermag.com/frances-nuclear-storm-many-power-plants-down-due-to-quality-concerns/?printmode=1