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トランプ大統領 「キーストンXL」と「ダコタ・アクセス」の2大石油パイプライン建設計画推進の大統領令に署名。オバマ前政権の環境配慮政策を全否定(RIEF)

2017-01-26 20:06:23

Trump1キャプチャ

 

  「公約通り?」というか、トランプ米大統領は環境分野でのオバマ政権の政策の変更に着手した。オバマ前政権が却下していたカナダから米テキサス州に原油を運ぶ「キーストンXL」計画と、ノースダコタ州とイリノイ州を結ぶ「ダコタ・アクセス・パイプライン」の両方の原油パイプライン建設計画にゴーサインを出す大統領令に署名した。

 

 キーストンXLは、カナダのエネルギー企業のトランスカナダが、アルバータ州で産出したオイルサンドや原油をテキサス州まで運び、精製する計画。直径90cmのパイプを全長2700kmにわたって、地中に埋設する。搬送する原油量は一日最大約80万バレル。国境を超えるパイプライン計画は大統領の承認が必要なことから、米加国境を結ぶ北部部分と、米国内だけの南部分とに2分割して計画が進められてきた。

 

 すでに国内の南部分では途中のカンザス州やオクラホマ州などの一部で完成している。総事業費は80億㌦(約9100億円)、工事などで4万人以上の雇用が見込めるとの経済効果も指摘された。共和党が主導する連邦議会では北部部分(約1900km)の建設推進法案が可決された。

 

XLキャプチャ

 

  しかし、パイプラインからの環境汚染や、事故リスクの可能性を懸念する環境保護団体や、パイプライン沿線の住民の反対を受けて、オバマ大統領は2015年、法案に拒否権を発動して阻止した。http://rief-jp.org/ct12/50253

 

 一方のダコタ・アクセス・パイプラインは、ノースダコタ州からイリノイ州につながる全長1886kmの原油パイプライン。パイプランがミズリー川を堰き止めて作った人造湖のオヘア湖の下を潜り抜けるルートになっている。このため、予定地の近くに居留地を持つ先住民のスタンディング・ロック・スー族が、「水資源が汚染される」「伝統文化や慣習を無視している」と抗議をしていた。

 

 パイプラインは9割以上が建設完了していたが、スー族の主張に、全米の先住民が同調したほか、環境保護団体なども反対の運動を展開した。これらの動きを受けて、工事予定地を所管する米陸軍工兵司令部は、オバマ政権の要請を踏まえて、代替ルートへの変更を指示していた。http://rief-jp.org/ct6/66185

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 両パイプライン建設計画は、「環境か、エネルギーか」を選択する象徴的なテーマとなっていた。トランプ大統領は、大統領選挙戦中から、これらパイプラインの建設推進の姿勢を明確にしていた。

 

 今回、建設承認の署名に際して、トランプ氏は、キーストーンXL建設で新たに2万8千人の雇用が見込めると指摘するとともに、工事には国産資材を使うよう具体的に指示し、「多くの労働者が仕事に戻れる」などと強調した。

 

 さらに、今後も環境アセスメント(影響評価)の手続きや承認手続き等についてもできるだけ期間を短縮して、建設工事の着工を早める姿勢を示している。大統領令の署名を受けて、事業主体のトランスカナダは、建設計画を再申請するとしている。再申請が出ると、国務省が審査し、60日以内に決定される。

 

 トランプ大統領は、もう一つのダコタ・アクセス・パイプラインについても、陸軍工兵隊が示した代替案の採用については言及せず、当初の計画を再評価し、速やかに手続きを進めるよう指示した。ノースダコタ州石油協会は、大統領令はエネルギー安全保障につながるとして歓迎の意向を表明。一方のスー族は、大統領令の阻止に向けた措置をとる、との方針を明らかにしている。法廷闘争も辞さない構えのようだ。