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環境省「グリーンボンドガイドライン(骨子案)」を公表。国際基準GBPの翻訳・解釈が中心の構成。ただ、GBPよりも「緩い基準」で、発行体寄りの視点が色濃く(RIEF)

2017-01-28 22:21:24

MOE3キャプチャ

 

 環境省は、「グリーンボンドガイドラン2017年版」(骨子案)という資料を公表した。グリーンボンドの国内での普及を図るため、国際的に認知されている「グリーンボンド原則」(GBP)との整合性に配慮しつつ、「日本の特性に即した解釈を示す」と説明している。

 

 グリーンボンド発行の基準としては、上記のGBPのほか、英国非営利団体のClimate Bonds Initiative(CBI)によるCBSなどがある。グローバル市場で発行されるグリーンボンドのほぼ半数は、どちらかの基準に準拠しているとの認証が付いている。これ以外では、環境省が目指すような国内向け基準が中国にあるほか、債券市場が未熟な途上国で国内版の取り組みが進んでいる。http://rief-jp.org/book/66747?ctid=35

 

 昨年後半に日本でも三菱UFJフィナンシャル・グループや野村総合研究所などのグリーンボンド発行が相次いだ。いずれもGBPに準拠している。しかし、環境省は「海外に比べて普及は十分とはいえない」として、環境省版のガイドラインを提示した形だ。

 

 環境省版とはいえ、骨子案を見る限り、GBPの基準と説明を和訳し、それに環境省が自前の解釈を加えた表現が中心だ。GBPは民間金融機関が自主的に取りまとめたもので、すでに金融市場ではデファクトスタンダードとみなされている。それを日本政府の一員である環境省が翻訳・解説して「日本のガイドライン」と呼ぶ図式だ。

 

 GBPの「著作権」を侵害している心配もしたくなるが、環境省独自の点もある。GBPはグリーンボンドのフレームワークとして①調達資金の使途②プロジェクトの評価及び選定のプロセス③調達資金の管理④レポーティング、の4項目の「コア要因」を示している。これに対して、環境省のガイドラインは、これら全てに対応しなくてもいい、と明記している。

 

 GBPの4つのコア要因は、一種の最低基準(Minimum Standards)と理解されるべきものだ。だが、環境省版では、「環境改善効果の評価やレポーティングが十分でなくとも、調達資金が環境改善効果のある事業に確実に充当されるのであれば(いい)」としている。ただ、レポーティングが不十分な場合に、「確実に充当される」ことをどう検証するのかという説明はない。

 

 また「投資家その他の市場関係者によって考え方が異なる事項(何を想定しているかの説明はないが、石炭火力や原子力発電などを指しているように思える)については、「一律に排除するのではなく、発行体が情報開示する」としている。

 

 環境省版は総じて、発行体がグリーンボンドを発行しやすいように、グリーンの評価やレポ―ティングをそれほど重視せず、発行体のコスト削減や事務的負担の削減を強調している。しかし、発行体寄りの緩い基準だと、結果として発行されたボンドのリスク評価を外部からしづらくなり、投資家サイドの負担を増す可能性がある。

 

 環境省版は「グリーンウォッシュ債券」が出回ることを防止することに留意する、としている。だが、むしろ、このガイドラインが世に出ると、国内の個人投資家向けのグリーンウォッシュ債券が増える懸念もある。

 

  いずれにしろ、環境省版のガイドラインは、国際的に通用するGBP基準よりも「緩いローカル基準」を目指していることは間違いないようだ。同基準に準拠した場合、いわば、“2流のグリーンボンド”との認証を得ることになるが、そうした債券を発行するメリットのある発行体とはどこだろうか?

http://www.env.go.jp/press/103549.html