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欧州3送電会社 北海のど真ん中に「人工島」建設へ。洋上風力発電のハブ&ポーク化。1億人分の電力を賄う100GWの発電を確保へ。島は早ければ2035年に誕生(RIEF)。

2017-04-04 23:36:46

Tenett5キャプチャ

 

 欧州の再生可能エネルギー開発が壮大になってきた。ドイツ、デンマーク、オランダの3か国の送電会社が、北海洋上に人工島を建設し、約1万基の洋上風力発電設備をつなぐネットワークのハブとして位置付ける。洋上の「ハブ&ポーク」の展開で、最大1億人が消費できる100GWの電力を作り出すという。日本は再エネ開発の“本気度”で欧州に大きな差をつけられてきた。

 

 プロジェクトは「北海風力発電ハブ(North Sea Wind Power Hub)」と名付けられる。オランダとドイツを拠点とする送電大手会社のTenneT TSO B.V. (オランダ)とTenneT TSO GmbH(独)、デンマークのEnerginet の3社が主導する。域内の「エネルギー同盟」を推進する欧州委員会も後押ししている。

 

 人工島を建設する海域は、北海を取り巻く6か国(ドイツ、英国、オランダ、デンマーク、ノルウェー、ベルギー)からほぼ等しい約200km沖合の地点。このうち5カ国の排他的経済水域に重なるが、今回のプロジェクトでは発電した電力と水域との関係を切り離すという。

 

 事業主体の3社は今後、数年かけて、人工島の建設地のフィージビリティスタディを実施、早ければ2035年には島が誕生すると想定している。建設予定の人工島は1つないし2つ。北海の面積は日本の国土の1.5倍の57万㎢と広い。ただ、中央部の面積1万7600㎢は、四国とほぼ同じ広さで東西に長い「ドッガーバンク」と呼ばれる浅瀬地帯になっている。

 

 浅いところで水深13m、深い所で30m程度。現在、北海沿岸諸国が洋上風力発電を建設している沿岸部の深部とほぼ同じ水深という。つまり洋上風力建設と同じ条件で、島を作ることができる。人工島には建設コストがかかるが、現状よりコスト削減できる面もある。

 

Tnnet1キャプチャ

 

 それが送電コストだ。現在の洋上風力は、海中を長距離にわたって交流で送電できないことから、発電所ごと、またはウィンドファームごとに交流直流変換装置を設けなければならない。この変換装置の費用は風力発電設備が増えるほど上昇する。また風車の保守・整備費用も増える。

 

 人工島がハブになると、各ウィンドファームから人工島に交流で送電、島内で一括して直流変換した後、各国に直流送電するようにすれば、変換装置のコストを大幅に削減できる。島には空港や港湾を設け、保守部品の備蓄スペースや、保守要員の常駐する“街”も置くので、保守・整備費用も減少する。

 

 島を取り巻くように周辺の浅瀬に、洋上風力発電設備を約7000基から1万基分建設できる。計算では最大で100GWの電力を得られるという。また島の上にも、風力発電と太陽光発電を設ける。北海のど真ん中なので、沿岸部よりも風力が安定的に吹くことから発電効率も向上するという。

 

 人工島によるハブ&ポークの洋上風力発電ネットワークの最大のメリットは、発電効率の上昇だ。現行のように、個々のウィンドファームの電力を交流直流変換を経て陸上の系統送電網と接続する場合の送電部の設備利用率は40%程度。これに対して、人工島に複数のファームを接続する場合、Tenettなどの試算によると、設備利用率は100%に達し、ウィンドファーム当たりの送電コストは現状よりも半分以下になる計算という。

 

 TenneTのCEO、Mel Kroon氏は「今回のEnerginetとの協力は、北海沿岸諸国の他の送電会社やインフラ企業のイニシアチブへの参加を促すことにつながる。究極の目標は、欧州のエネルギー転換を低コストで実現できる強力な企業連合を築くことにある」と事業の展望に自信をみせている。

 

 EnerginetのCTO、Torben Glar Nielsen氏は「北海のど真ん中に人工島を作るなんで、科学フィクションみたいだが、実際は北海沿岸諸国にとって、再エネ電力への将来の需要に応えるためには、非常に効率的でかつ適切な道だと思う」と述べている。

 

 同計画が目指すのは、人工島を欧州の電力取引のハブにするという期待もある。沿岸各国と人工島を高圧直流送電技術で接続すれば、複数の国々の電力取引市場を接続することができる。各国の需給に即した市場を通じた電力の相互融通がしやすくなる。

 

 もちろん課題もある。一つは、どれほどの建設費用になるかというファイナンス面の課題。埋め立ての土砂や構造物をどう確保するか。また、人工島の大きさや数にもよるが、人工物を北海の真ん中に建設することによる海流への影響、海洋生態系への影響なども見逃せない。Tennetなどは、環境への影響については自然科学者やNGOなどと協力して対応していくとしている。

http://www.tennet.eu/news/detail/detail/News/samenwerking-europese-hoogspanningsnetbeheerders-voor-ontwikkeling-north-sea-wind-power-hub-1/

 

http://www.offshorewind.biz/tag/north-sea-wind-power-hub/