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EU・中国、2日からの首脳会議で「米国抜きのパリ協定」でも、EU中のリーダーシップ共有を宣言へ。カーボン排出権取引での協調にも言及(RIEF)

2017-06-01 11:21:07

EUchinaキャプチャ

 

 欧州連合(EU)と中国は、ベルギーのブリュッセルで2日から開くEU中首脳会議で、低炭素社会に向けた「エネルギー転換」を宣言する。トランプ米大統領がパリ協定からの米国離脱を宣言する見通しであることを受け、EUと中国が協定の実行を主導していく決意表明となる見通しだ。

 

 米ニューヨークタイムズやCNNなどは31日、トランプ大統領がパリ協定からの離脱を近く表明すると報じている。大統領の協定離脱表明と並行する形でEU中首脳会議が開かれるが、EUが米国に代わって気候変動対策をリードする役回りは引き受けることは、京都議定書からの米国離脱時と同じだが、EUのパートナーは京都の際の日本ではなく、中国となる点が大きな変化だ。

 

 欧州メディアは、EU中首脳会議のために作成された9ページの共同声明案で、両者は、パリ協定の全面実施に向けて「最も高い政治的コミットメント」を果たしていく、との決意を明言し、温暖化・エネルギー対策で新たな協力関係を強化することをうたっていることを報じた。

 

 欧州委員会の気候変動担当委員のミゲル・アリアス・カニェーテ氏は同日、「われわれは、たとえ米国がパリ協定から脱退しても、引き続き全力で協定の実施を推進し、世界がクリーンエネルギー化に移行することを加速していく」と指摘。中国とEUのリーダーシップの共有を強調した。

 

 カニェーテ氏はさらに続けて、「EUと中国は、CO2排出権取引やクリーンエネルギー技術などの分野で協力を進め、豊かな成果を生み出すだろう。今まさにその協力をさらに強める時期だ」と決意を新たにした。中国は今年中に全国規模の排出権取引の実施を予定しており、EUのEU-ETS(欧州排出権取引)との連携が深まる可能性も出てきた。

 

 公表される共同声明では、EUと中国の両者だけでなく、すべての協定参加国に対して、協定順守を各国が最上位の政治的コミットメントとするよう求める予定。気候変動の重大さについては、「国家の安全保障に関わるものであり、社会面、政治面での脆弱性を増大させる要因だ」と指摘、米国が国内経済面だけの理由で、離脱を目指す姿勢を間接的に批判する表現も盛り込んでいるという。

 

 米国の協定離脱によって、先進国から途上国へ供給される資金・技術支援が滞るのではとの思いから、途上国サイドの足並みが乱れる懸念もある。こうした懸念に配慮して、EU、中国は 「両者の合意はパリ協定に基づく国際的な貢献を完全に実施することが、従来にも増して重要になっている」との表現も盛り込むという。結果的に、中国が主導するAIIB(アジアインフラ開発銀行)などの役割が高まる可能性を示唆している。

 

 首脳会議には、中国から李克強首相が出席するほか、EU側は欧州理事会大統領(常任議長)のドナルド・トゥスク、欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長らが出席する。複数の課題のうち、気候変動を最優先議題として会談する。日程は今月 2~3日の両日。