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神戸製鋼所による神戸市街地での大規模石炭火力発電所計画。環境影響評価準備書は「恣意的な内容」と住民団体らが批判。兵庫県知事、神戸市長に厳正な対応を要請(RIEF)

2017-08-02 17:53:32

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  神戸製鋼所が神戸市灘区の神戸製鉄所内に建設を計画中の石炭火力発電所について、阪神間の住民団体や環境NGOら8団体が、「将来の神戸・阪神地域に重大な環境影響をもたらす」として、兵庫県知事と神戸市長に対して、環境影響評価手続きに基づく地元自治体の意見形成に際して厳正なる審査に臨むよう求める要請書を提出、公開した。

 

 神戸製鋼の計画では、同社の高炉設備を休止した跡地に、65万kWの発電能力を持つ石炭火力を2基建設し、2021年から稼働する方針。しかし住民団体らは、発電所が住宅地から 400m の至近に、既存のものも含めると、合計 270 万 kW の石炭火力が汚染物質を排出することになり、こうした石炭火力の集中度は「国内・海外でも例をみない」と指摘している。

 

  要請書を提出したのは、「神戸公害患者と家族の会」「西淀川公害患者と家族の会」「公益財団法人 公害地域再生センター(あおぞら財団)」「特定非営利活動法人 地球環境市民会議(CASA)」「特定非営利活動法人 気候ネットワーク」「神鋼石炭火力公害問題灘区連絡会」「石炭火力発電問題を考える市民ネットワーク」「ひょうごECOクラブ」の各団体。

 

 同発電所の石炭の使用量は年間317万㌧に及び、CO2排出量は新設の2基だけで約700万㌧、既設分を含めると約1400万㌧(一般家庭430万世帯分)となり、神戸市全体のCO2排出量(約1200万㌧)を上回る規模となる。阪神間はかつて、深刻な大気汚染が起き、長年の努力で環境回復が図られてきたが、そうした努力を無にするもの、と強く批判している。

 

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 また神戸製鋼が作成した環境影響評価準備書では、評価の基本となるバックグラウンド濃度の算定において、従来の高炉設備による環境への寄与度を差し引いたバックグラウンド濃度を示すべきなのに、そうせず、高いバックグラウンド値をベースに影響評価を示して「発電所の影響を恣意的に低く見せている」と指摘。

 

 さらに神戸製鋼は住民への説明会などで、窒素酸化物等の大気汚染物質は発電所を設置しても、高炉からの排出に比べて将来、濃度が低下する、との説明している。この点について、住民団体側は、「高炉の稼働率を100%と過大に評価して、汚染物質排出量を試算しており、数字のトリックを使っている」と、同社の”不誠実さ”を批判している。

 

 また、PM2.5についても環境影響評価を行わず、環境保全措置も講じていない。石炭燃焼に伴って排出される水銀などの重金属物質の排出についても、排出総量を明らかにせず、予測結果を過小に評価していると、している。

 

 環境影響評価手続きでは住民の意見表明は8月24日まで。住民団体らは手続きに基づいて問題点を指摘するともに、県知事、市長の意見表明においても、これらの疑問点への改善を求め、住民の視点に立った対応を神戸製鋼側に強く求めることを要請している。

 

 石炭火力発電所の建設をめぐっては、山本公一環境相が、中部電力による武豊火力発電所建設計画に対して、CO2排出量が現状より200万㌧増大することを懸念して、計画の中止を求める意見書をまとめている。

http://www.kikonet.org/info/press-release/2017-08-01/taketoyo-project-must-be-cancelled