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トランプ大統領、「国家安全戦略(NSS)」文書を公表。気候変動を「グローバル脅威」から除外。「アメリカ・ファースト」を強調(RIEF)

2017-12-21 23:21:07

trumpキャプチャ

 

 トランプ米大統領はこのほど発表した米国の「国家安全保障戦略(National Security Strategy: NSS)」文書の中で、「グローバル脅威」のリストから、気候変動の除外を明確にした。代わりに、「米国の繁栄を促進する」などの『アメリカファースト戦略』を強調した。大統領は気候変動対策の国際合意であるパリ協定からの離脱を明言しており、国としても気候変動対策の政策順位を引き下げた形だ。

 

 NSSは米国の国家安全保障政策の中核を構成する文書。どの大統領にとっても政策運営の柱になるものと位置付けられている。NSSは、大統領が国民を代表し、自らの国家安全保障に関するビジョンをどう具体化していくのかを、米国民、同盟国とパートナー、そして連邦政府機関に説明するものである。

 

   トランプ大統領のNSSでは、「我々の政権の第一の責務は、国民・市民に対するものであり、彼らの要望に応え、安全を確保し、権利を擁護し、価値観を守ることである」と、”アメリカ・ファースト”を再確認した。そのうえで、戦略の柱として4つのテーマを掲げた。

 

 それらは、①国土と国民、米国の生活様式を守る②米国の繁栄を促進する③力による平和を維持する④米国の影響力を向上するーーである。

 

 オバマ前政権のNSSでは、気候変動を米国が直面する主要な危険の一つとして位置付け、米国のみならず、各国の国家安全上の優先課題に、気候変動を含めるための国際的なコンセンサス作りの必要性を主要戦略に掲げていた。トランプ政権のNSS作業は、11カ月かけて政権内の関係部局がとりまとめた。

 

 NSSの主要な政策の柱から、気候変動を除外する決定をめぐっては、政権内部でも異論があったとされる。その一つが、国防長官のジェームス・マティス氏。同氏は気候変動の叙階に難色を示したと伝えられる。同氏は1月に行った上院の軍事サービス委員会での議会証言で「温暖化はリアルな課題だ。

 

 マティス氏が、温暖化が現実の脅威であることを指摘したのは、海外での米国の利害に影響を及ぼし、国防総省(ペンタゴン)が世界中に展開する海外資産の毀損リスクが高まる、との理由からだった。その意味では安全保障を踏まえているが、トランプ大統領とは視点が異なった。

 

 トランプ大統領は6月に、炭鉱の町、ピッツバーグを演説地に選んで、「私は、ピッツバーグの市民を代表して大統領に選出された。パリの市民ではない」と指摘。その後、指摘通りに、パリ協定からの離脱を宣言した。今回のNSSでの気候変動テーマの格下げは、その意味ではトランプ氏の気候変動を軽視する姿勢が一貫していることを示した。

 

 新たなNSSの主要テーマは、トランプ氏が以前から強調している米国のための国家安全保障と外交政策が基本となている。政権内の関係役人は、「大統領はNSSの主要テーマの転換を、非常に喜んでいる。米国国民のためにも、世界のためにもなると述べている」と解説している。

 

 米国の気候変動対策はトランプ政権下では変化しないことを、改めて内外に宣言する形となった。

 

https://jp.usembassy.gov/ja/new-national-security-strategy-new-era-ja/