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2017年の太陽光発電関連事業者の倒産、件数、負債総額とも過去最高に。件数88件、総額285億円。政府の再エネ政策の急変に踊らされた参入事業者(RIEF)

2018-01-14 12:31:35

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 商工リサーチによると、2017年中の太陽光関連事業者の倒産が件数、負債総額とも過去最高を記録した。件数は88件(前年比35.4%増)で、調査を開始した2000年以降で過去最多だった2016年の65件を大きく上回った。3年連続で過去最多の更新。負債総額は285億1,700万円(同17.6%増)で、4年連続で前年を上回った。発電事業者の事業計画の甘さに加えて、経済産業省の再生可能エネルギー政策が再三、変更されてきたことの影響も大きい。

 

(写真はイメージ。記事の内容とは関係ありません)

 

 調査はソーラーシステム装置の製造、卸売、小売を手がける企業、同システム設置工事、コンサルティング、太陽光発電による売買電事業等を展開する企業(主・従業は不問)を「太陽光関連事業者」と定義し、集計した。

 

 それによると、倒産件数は上半期(1-6月)だけで47件(前年同期比56.6%増)発生し、2015年の年間件数(54件)に迫る水準だった。下半期(7-12月)は41件(同17.1%増)で、上半期よりペースは若干鈍化したものの、依然、前年同期を上回り、通年で増勢の傾向は変わらなかった。

 

 負債総額は2015年から200億円台に乗せており、2017年は負債10億円以上の倒産が6件(前年3件)と倍増した結果、総額も膨らんだ。負債額別でもっとも多かったのは、1億円以上5億円未満の30件(構成比34.0%)。

 

 2017年の最大の大型倒産は(株)ZEN POWER(福岡県)の負債52億円。太陽光発電モジュールの組立、販売を手掛けていたが、大口焦付や欧州でのモジュール価格の下落、国内の固定買い取り価格の引き下げなどで受注が大幅に落ち込んだ。


 日本の再エネ市場は、2012年7月に、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの発電事業を育成するために、固定価格買い取り制度(FIT)が導入された。特に、市場参入が容易な太陽光関連市場は急速に拡大した。

 

 しかし、参入事業者が集中した結果、事業者の乱立や、経産省による再三の買い取り価格の引き下げなどで、事業者の経営環境が次第に悪化。一方で経産省は太陽光以外の再エネへの緩やかな政策誘導もあって、太陽光発電市場は競争力のある大手以外は、急速に市場競争力を喪失している。

 

  • 太陽光関連事業者の倒産 年次推移

 

 

太陽光関連事業者の倒産 負債額別

 倒産の原因別では、「販売不振」が最も多く42件(構成比47.7%)とほぼ半数を占めた。次いで、「事業上の失敗」が13件(同14.7%)、「既往のシワ寄せ」が9件(同10.2%)と続く。


 前年との比較で増加が目立ったのは、「売掛金回収難」の300.0%増(1→4件)、「既往のシワ寄せ」の125.0%増(4→9件)だった。たとえば、「ISHIO」(和歌山県)は住宅向けリフォーム、太陽光発電装置の設置工事などを手掛けていたが、リフォーム工事で回収不能(売掛金回収難)が生じ、事業継続ができなくなった。


 2017年9月に大分地裁から破産開始決定を受けた「にしもと」(大分県)は、塗装工事を主業としていた。2015年6月期に太陽光発電設備の設置工事に参入したが、不慣れから赤字を散発した。光回線の営業代理を手掛ける企業を母体として2012年に設立された「北電テクノ」(北海道)は、当初は好調な業績を計上していたが、その後の太陽光関連補助金の終了や縮小などで受注が減少、2017年11月に札幌地裁から破産開始決定を受けた。


 このように太陽光関連事業者の倒産は、成熟市場のプレイヤーが業容拡大を求めて参入したものの、ノウハウ不足や安易な事業計画で経営が立ち行かなくなるケースが目立つ。

  

 政策面では、経産省は太陽光の発電コストの更なる低減を目標に掲げ、出力2MW以上の事業用設備は入札に移行、2017年11月に第1回入札の結果を公表した。最低落札価格は17.2円/kWhで、2012年度の買い取り価格40円/kWhから半減した。住宅用は2019年度に24円/kWhになる予定で、2012年度の42円/kwhから4割以上下落する。


 商工リサーチでは、「太陽光モジュールや架台、設置工事の値下げ圧力は加速しており、太陽光関連事業者は技術革新や工法の最適化などで市場ニーズに合った単価で製品・サービスを提供できるか問われている。これに対応できない事業者の淘汰は、今後も避けられない」と指摘。2018年も、太陽光関連事業者の倒産は、引き続き高水準で推移する可能性が高い、とみている。

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180112_03.html