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英大手銀HSBC、民間銀行初のSDGsボンド、ドル建てで10億㌦分発行。GBP等に適合。HSBCホールディングスによるTLAC債として発行(RIEF)

2017-11-19 20:39:02

HSBC3キャプチャ

 

  英大手銀行のHSBCは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成に資する投融資資金を調達するため、初の「SDGsボンド」を10億㌦発行した。SDGsの目標達成のために資金調達するボンドの発行は、世界銀行に次ぐが、民間銀行としては初めてとなる。ボンドは、国際資本市場協会(ICMA)が管理するグリーンボンド原則(GBP)等に適合している。

 

 HSBCは今月初め、気候変動対策や持続可能な成長支援のため、2050年までにサステナブルな投融資を総額1000億㌦(約11兆3000億円)の実施を宣言した。今回のSDGsボンド発行は、そうしたサステナブル投融資宣言の具体的活動でもある。http://rief-jp.org/ct6/74423

 

 民間金融機関として初のSDGs対応のボンドとなったことから、ESG投資を重視する欧米の機関投資家等の応募が殺到し、発行額を3倍も上回った。HSBCはSDGsボンド発行と同時に、資金調達の基本方針をまとめたSDGsボンドフレームワークも公表した。そこでは、SDGsの17目標のうち、「健康増進と福祉の促進」(第3目標)、「教育の確保」(第4目標)など7つの目標をターゲットとしている。

 

HSBCキャプチャ

 

 HSBCは2015年11月にも、傘下のフランスHSBCが5億ユーロのグリーンボンド(5年債)を発行している。ただ、今回は本体のHSBCホールディングスの発行で、大手国際金融機関に課せられるTLAC(総損失吸収力)規制への対応でもある。

 

 債券の償還期間は6年で、5年経過すると満期前償還が可能。米財務省証券+115bpで立ち上がったが、最終的に+100bpとなり、HSBCの発行債券の通常のイールドカーブと同じ評価になった。債券はA2/Aの格付を得ている。

 

 SDGsボンドフレームワークでは、資金使途の対象となる7つのSDGs目標として、「健康増進と福祉の促進」(第3目標)、「教育の確保」(第4目標)のほか、「クリーンな水と公衆衛生の確保」(第6目標)、「利用可能でクリーンなエネルギー」(第7目標)、「持続可能な産業、イノベーションの促進、レジリエントなインフラスの構築」(第9目標)、「持続可能な都市とコミュニティ」(第11目標)、「気候変動への行動」(第13目標)を設定した。

 

 それらの目標における具体的な投融資事例として、病院・医院、健康センターなどの建設資金、緊急救護などのインフラ・機器整備費、医療関連の職業訓練センター、学校やキャンパス、学生向け寮などの建設、上下水道の建設・管理、太陽光・風力等の再生可能エネルギー発電などを、例示している。

 

 債券の資金使途先は、7つの目標に該当するビジネスやプロジェクトからの収入の90%以上が、対象となる持続可能ビジネス活動から由来するものとする。またフレームワークは、原発、兵器、アルコール、ギャンブル、成人向け娯楽産業、パーム油の各産業を投融資対象から除外することも明記している。

 

  HSBCは、今回のSDGsボンド発行について「SDGsの達成に向けた投融資活動を通じて、『企業市民』としての我々の長き伝統を踏まえた仲介機能を発揮できる。新たに設定したSDGsボンドフレームワークはそうした影響を明確にし、投資家に対しても、SDGsの17の目標達成に必要な貢献を促すことにつながるだろう」と位置付けている。

 

 国連のSDGsは2030年までに、世界の貧困・格差の問題、気候変動などの地球環境の課題の解決と、社会の変革をもたらすことを目指して、2015年9月に、国連加盟国193か国の全会一致で採択された目標。変革をもたらすための17の目標と、169のゴールの達成を設定している。

 

 これらの目標を実現するには、世界全体で年間約4兆㌦近い追加資金の投入が求められるという。現在の関連領域への投資資金は約1兆4000億㌦とみられ、約2兆5000億㌦の投資ギャップがあることになる。

 

http://www.hsbc.com/investor-relations/fixed-income-investors/green-bonds