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国際的な主要銀行33行、パリ協定採択後3年間の化石燃料事業への投融資総額1兆9000億㌦(約200兆円)。毎年増加。1位は米銀JPモルガン・チェース。日本勢1位はMUFG(RIEF)

2019-03-21 22:02:37

Banktrack1キャプチャ

 

  国際的な環境NGOグループは、グローバルな主要33銀行の化石燃料関連事業への投融資総額が、2015年のパリ協定採択後の3年間で毎年増加し、総額1兆9000億㌦(総額約200兆円)に達したと公表した。投融資額が最も多かったのは米銀JPモルガン・チェース。上位12位中、半分を米銀が占め、パリ協定離脱を表明したトランプ政権の政策を映した形になった。日本勢は、7位に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が入った。

 

 調査は、米環境NGOのシェラクラブや、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)、BankTrackなどが共同で毎年実施する「化石燃料ファイナンス成績表」(Banking on Climate Change)で、今回が10回目。

 

 それによると、パリ協定採択後の投融資額は、2016年が6120億㌦、17年が5.5%増の6460億㌦、18年が1.2%増の6540億㌦と、3年連続で増えている。3年間の総額のうち、6000億㌦は化石燃料ビジネスを主とする世界の上位100の企業に集中してファイナンスされているという。

 

グローバル主要銀行33行の化石燃料関連事業融資ランキング(2015年~18年合計)
グローバル主要銀行33行の化石燃料関連事業融資ランキング(2015年~18年合計)

 

 特に「化石燃料ファイナンス」が際立ったのが米銀だ。全体のトップとなったJPモルガン・チェースは、総額1956億㌦で、全体の1割強を占めた。2位の米銀ウェルスファーゴ(総額1516億㌦)よりも約3割も多く、断トツだった。3位のCIti(1295億㌦)、4位のバンクオブアメリカ(1067億㌦)までが米銀で、5位カナダのRBC(1005億㌦)までが、1000億㌦台の規模となっている。

 

  米銀勢が上位を占めたのは、国内でのシェール石油・ガス生産が好調で、投融資資金需要が旺盛に続いていることが大きい。また政策面でも、温暖化対策を重視したオバマ前政権から一転して、トランプ政権がエネルギー開発優先の姿勢を鮮明にしていることなどが、化石燃料ファイナンスに傾斜する誘因とみられる。

 

 米銀に続いて化石燃料ファイナンスが顕著なのが、カナダ勢。5位のRBSのほかにも、8位にTD(741億㌦)、9位にスコティアバンク(741億㌦)と、3行がそろって「ワースト10」に名を連ねた。カナダ市場でもタールサンド開発が続いており、同市場への投融資が増大している。

 

Fossilebank1キャプチャ

 

 日本勢は7位にランクされたMUFGが総額800億㌦、みずほフィナンシャルグループが677億㌦で10位、三井住友フィナンシャルグループが380億㌦で21位。北米の銀行勢の影響で目立たない形となったが、3メガ合計で全体の1割近くを占めている。

 

 日本の3メガバンクは特に石炭火力等へのファイナンスの多さを指摘されている。過去3年間に3メガ全体で総額740億㌦を、融資や債券引き受けの形で、日本の電源開発(J-POWER)や韓国の韓国電力公社(KEPCO)などの世界の上位30位の石炭火力発電事業企業にファイナンスしている。

 

 石炭火力向け投融資では国内の石炭火力事業上位20社向け融資で、みずほがトップで、MUFGやSMBCのほぼ2倍の資金を供給している。

 

 国際的な主要銀行は一方で、サステナブルファイナンスや再生可能エネルギー事業向け「クリーンファイナンス」を強調するキャンペーンも展開する。だが、報告書を作成したRANの気候・エネルギー首席研究員のAlison Kirsch氏は「パリ協定から3年、すでに赤信号が点滅している」と警告している。

 

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が昨年10月に公表した特別報告書では、地球の気温上昇を産業革命前から1.5℃に抑制するには、エネルギー分野の効率化や再エネ事業、CCSなどの低炭素事業に年間2兆3800億㌦規模を投じる必要があると指摘している。

 

 現在、主要銀行が化石燃料ファイナンスに投じている総額をさらに上回る資金需要が毎年求められているわけだ。こうした「低炭素ファイナンス需要」に、国際的な銀行が投融資のカジ取りを切り替えるには、国単位の明確なCO2削減目標の設定と、その目標と整合性のある規制・支援措置、カーボン価格政策等の導入等が求められる。

https://www.ran.org/bankingonclimatechange2019/