国際金融業界団体が「サステナビリティ・リンク・ローン原則（SLLP）」制定。借り手企業のCSR戦略の制定や、それへの適合状況など4項目を評価へ（RIEF）
2019-03-25 08:19:19
国際金融業界団体の「ローン市場協会（LMA）」などが共同で「サステナビリティ・リンク・ローン原則（SLLP）」を制定した。LMAなどは2018年にグリーンローン原則（GLP）を公表しており、これをサステナビリティ関連事業向けローンに拡大する形だ。国連の持続可能な開発目標（SDGs）関連事業への資金供給促進につながる期待がある。
SLLPを策定したのは、LMA（Loan Market Association）のほか「Loan Syndications and Trading Association：LSTA」、「Asia Pacific Loan Market Association:APLMA」の3団体。原則化に際しては、GBPやサステナブルボンド・ガイドライン等を運営する国際資本市場協会（ICMA）の支援を受けた。
サステナブルリンクローンとは、貸し手金融機関が、借り手企業が掲げる野心的なサステナビリティ活動の達成支援を目指すために、借り手のサステナビリティ要素を、貸し手が判断し易いように標準化をした金融商品、との位置付けだ。ホールセールローンを対象とし、借り手のサステナビリティ業績にローン金利が連動する仕組み（優遇金利）などが提案されている。
SLLPはグローバルフレームワークとして、同ローンの主要な特徴を4つ要素で示した。①借り手のCSR戦略全体との関連性②目標の設定（借り手のサステナビリティの測定）③レポーティング④レビュー、の4項目だ。
2018年に公表したGLPでは、グリーンボンドの国際市場原則であるグリーンボンド原則（GBP）に準拠する形で、資金使途先、対象プロジェクトの評価・選定プロセス、資金の管理、レポーティングの4要素を制定している。これに対して、SLLPでは、借り手のCSR活動の評価が軸となる。
一般的に、グリーンボンドやグリーンローンは、資金使途先のプロジェクトの評価が軸になる。一方、サステナビリティリンクローンの場合、当該企業のCSR活動等、企業自体のサステナビリティ度合いの評価が求められる違いがある、とされる。
その評価のために、借り手はSLLPの②が求めるように、事前にサステナビリティ業績目標（Sustainability Performance Targets ：SPTs）を明示する。貸し手金融機関は、当該企業の活動がSPTsに適合しているかどうかを、主要業績指標（KPI）や、外部格付等で評価することになる。グリーンボンド・同ローンの場合はタクソノミー（事業分類）が焦点になるが、SLLPの場合は、SPTsの対象がカギになりそうだ。
LMAの代表を務めるClare Dawson氏は「SLLPの公表はグローバルなホールセールマーケット市場全体を通じて、サステナビリティリンクローンの発展を促すだろう。LMAは引き続き市場参加者や各産業団体等と協力して、グリーンローン、サステナビリティローン市場のさらなる成長とイノベーションの推進に力を入れていきたい」と述べている。
すでに欧州市場を中心として、サステナビリティリンクローンは広がりをみせている。たとえば、仏電力大手のEDFは今月に入って、スペインのBBVA銀行から30億ユーロのサステナビリティリンク信用枠供与を受け入れることに署名した。昨年11月には同様の資金調達で40億ユーロを調達している。
同じように借り手企業のサステナビリティ活動や要素をローン条件に反映させた取引は、シンガポールの農業ビジネスのOlam、米国のCMS Energy、ドイツのHenkelなどが自社のCSR活動を踏まえてローンを調達した事例がある。
LSTAの代表者であるLee Shaiman氏は「投資家は借り手（事業者）のサステナビリティ要素の改善に、直接インセンティブを与えるような投資判断の影響についての関心を深めている。SLLPはそのために、借り手と投資家（貸し手）の双方が求める投資の目標達成と必要資本の調達という両面のニーズに合致することを期待できる」と語っている。
APLMAのCEOのAndrew Ferguson氏も「サステナビリティローンは今や、貸し手金融機関の資源配分と戦略的融資計画の中心課題になりつつある。したがって共通のフレームワークを設定することの重要性が高まっている」と指摘している。
https://www.lma.eu.com/news-publications/press-releases?id=162
https://www.lma.eu.com/documents-guidelines/documents/category/green–sustainable-finance#
Research Institute for Environmental Finance