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グラミン銀行創始者でノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏、日本の貧困層支援のNPOバンク「グラミン日本」設立を準備(各紙)

2017-09-18 23:27:47

Yunus1キャプチャ

 

 マイクロファイナンスの先駆者として知られるバングラデシュのグラミン銀行を創設したムハマド・ユヌス氏が、日本で貧困層向けに資金を供給する「グラミンバング日本」を設立することを検討していることがわかった。

 

 共同通信が報じた。ユヌス氏は金融を通じた貧困女性層へのファイナンスを中心とするグラミン銀行の創設・運営でノーベル平和賞を受賞したことで知られるが、今年2月に来日し、貧困層向け小口融資を研究している明治学院大学の菅正広教授との間で、「グラミン日本」の設立で合意したという。すでに8月に準備組織を設立、来年夏の運営開始を目指しているという。

 

 報道によると、菅教授は「日本ンは人口の6人に1人に当たる約2000万人が貧困ライン以下で生活している」ので、グラミン銀行のようなマイクロファイナンスに対する潜在的需要があると、説明している。

 

グラミンアメリカの活動に参加するユヌス氏
グラミンアメリカの活動に参加するユヌス氏

 設立を目指す「グラミン日本」の融資の対象は、働く意欲と能力のある人で、生活保護の受給資格者を含む低所得者、シングルマザーら。信用力を補うため、グラミン銀行が採用している友人同士5人一組の互助グループを作り、無担保で必要資金を融資する。この互助グループは連帯保証人とは別で、グループ中の人が借りた資金の返済が滞ると、連帯責任を負い、返済に協力するなどの行動を伴う。

 

 グラミン銀行はユヌス氏が1983年に設立した途上国のマイクロファイナンス機関の草分け的存在。働く意欲のある女性の起業支援の資金を無担保で融資するシステムを開発、2015年12月現在、881万人の借入者のうち97%は女性となっている。融資の焦げ付きは極めて限られている。支店は同国内に2568店あり、国全体で8万以上の村落にファイナンスを提供している。

 

 ユヌス氏はバングラデシュだけでなく、2007年には米国に進出して、「グラミンアメリカ」を設立した。現在、同機関は全米に19の支店を展開し、先進国の貧困層支援の活動を展開している。一方、バングラデシュでの本家のグラミン銀行の経営は、2011年、当時の政府との対立で、ユヌス氏はバングラデシュ中央銀行からグラミン銀行経営者の立場を解任された。ただ、現在も「創始者」としてサイトで紹介されている。

 

グラミン銀行はバングラでも、米国でも女性の雇用支援に力を入れている
グラミン銀行はバングラでも、米国でも、女性の起業・雇用支援に力を入れている

 

 共同通信の報道では、今後、日本社会の実態に合うように詳しい貸付条件などを検討し、開業に必要な金融当局への手続きを進めるとしている。融資に充てる資金は投資家などから調達するとしている。融資期間は6カ月または1年とし、最高20万円から始める方向。貸出金利はできるだけ低く融資する、などと説明している。

 

 日本での活動の場合、新たに銀行を設立するのは、金融庁の認可基準が厳しいことから、貸金業としての登録になる可能性が高い。米国のグラミンアメリカの場合も、資金調達は銀行のような預金ではなく、寄付金・贈与等の無コスト資金を土台とし、非営利の貧困対策機関のグラミン・ファンデーションなどと協調した行動を展開している。

 

 日本にはこれまでも、グラミン銀行の活動などもモデルとしたNPOバンクが複数立ち上がっている。未来バンク(東京)、女性・市民コミュニティバンク(横浜)、東京コミュニティパワーバンク(東京)、北海道NPOバンク、NPO夢バンク(長野)などだ。すでに20年以上の活動歴の団体もある。

 

 これらの市民レベルの活動は、それなりの成果はあげているものの、社会の貧困問題が広がる中で、十分な機能を果たしているとは言えない状況にある。その最大の理由は、無担保・低利融資を支える資金量の確保が容易ではないことだ。

 

 今回の「グラミン日本」の試みが成功するかどうかは、ユヌス氏の「名声」だけではなく、グローバルに貧困層支援を展開しているグラミン・トラストなどから一定の資金供給を持続的に受け入れられるかという点と、日本社会で市民レベルの「助け合い資金」を十分に確保できるかにかかっているといえそうだ。

 

http://www.grameen.com/

http://www.grameenamerica.org/