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お坊さんの電力会社「TERA Energy」、事業計画を公表。2019年度から中国・四国地方で先行スタートし、将来は全国7万寺を網羅、年間1兆円の販売を目指す(RIEF)

2018-11-01 08:05:11

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 お寺のお坊さんが設立した電力会社「TERA Energy」(京都市)が、2019年4月から始める事業計画を公表した。19年度は中国、四国地方の寺や檀家を中心に営業し、2020年度から全国展開に移行する。将来は全国約7万カ寺を網羅することで、年間約1兆円の売り上げを目指すというから、かなり大きな「風呂敷」を広げた形でもある。

 

 お寺が電気販売に乗り出す理由として、3つのポイントをあげている。①地球温暖化を防ぎたい②自死の活動の安定的な資金をつくりたい③地域にお金を循環させたいーー。

 

 ①の温暖化問題は、お寺が準拠する地域コミュニティにも大きな影響を及ぼすもので、コミュニティに立脚するお寺にとっての重要課題である。そこで、コミュニティを温暖化から守り、活性化させるために、エネルギー事業を地域で興し、③の地域内経済循環の仕組みを創り出す。そうすることで、コミュニティの中に、お寺と地域の人びとが共に考える場も創り出せるという狙いだ。http://rief-jp.org/ct7/83785

 

地域の檀家たちと電力話で知恵を絞る
地域の檀家たちと電力話で知恵を絞る

 

 ②の自死問題は、現代社会が直面している大きな課題の一つである。「地域と人びとの伴走者」を任じるお寺・僧侶たちは、日々、コミュニティの中で人々の生きざまに向き合っている。そうした「心を支える活動」や社会貢献活動に充当するお寺の資金についても、電力の販売益から捻出する考えだ。

 

 電力の販売収入の使途に、お寺への寄付金(お布施に相当)を盛り込むのは、コミュニティの変貌でお寺自身が檀家の減少等に直面し、運営難に陥っているところが少なくないことも背景にあるとみられる。コミュニティへの電力販売を通じて、お寺が地域の共有財産であることを再認識してもらい、お寺自身を支える循環の仕組みにもしたいとの思いもあるようだ。

 

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 こうした課題は宗派を問わず、全国のお寺に共通する。このため、TERA Energyの活動を支持・賛同する寺院も、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、真宗興正派、 臨済宗妙心寺派、高野山真言宗、真言宗智山派、曹洞宗と、宗派の枠を超えて名乗りをあげている。

 

 当面は、販売する電力は外部の独立系の電力会社等から再生可能エネルギー電力を調達する。太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)の期間が終了する「卒FIT世帯」の世帯等から調達し、経費や広告等を抑えることで、既存の大手電力会社の電力よりも2%ほど割安な価格で提供する。

 

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 顧客は、お寺の檀家のほか、お寺関連施設(付置の保育園・幼稚園、福祉施設など)、 宗教教団関連施設(寺務所、関係学校)、仏教ファン等をターゲットにしていく方針だ。

 

 販売電力については、自宅等に太陽光を設置したい檀家に対しては費用負担ゼロでソーラーパネルを設置するサービスも提供する。さらに中期的には中国地方で、同社自身が小水力発電に乗り出す計画もあるという。

 

 売り上げ目標は、19年度から先行的に実施する中国、四国地方で約7億円を見込む。20年度には17億千万円と、約2.5倍増としている。さらにその先、市場規模700万件、年間売り上げ約1兆円という大きな目標にたどり着けるかどうかは、定かではないが、お寺とお坊さんも、サステナビリティ課題に正面から取り組もうとしているのは間違いないようだ。

https://tera-energy.com/