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オランダ政府の温暖化対策の遅れを訴えた「気候訴訟」、控訴審も原告側が勝利。裁判所が、政府の政策責任の不備是正を指示。各国の温暖化訴訟に大きな影響。日本はどうか(RIEF)

2018-10-10 23:40:37

Nertheland13キャプチャ

 

 政府の気候変動対策が不十分だとして環境団体が政府を訴えたオランダの「気候訴訟」で、ハーグの控訴審裁判所は9日、一審判決を支持し、原告の訴えを認める判決を出した。判決は、温室効果ガスの排出削減は2020年までに少なくとも25%削減(1990年比)が必要とし、政府の政策の不備を認めた。政府の温暖化政策の不十分さを訴える訴訟はノルウェー、アイルランド、米国などで展開されており、オランダ政府の二審連続敗訴の影響は広がりそうだ。

 

 (写真は、オランダ・ハーグの控訴審法廷の様子)

 

 訴訟はオランダの環境NGOのUrgenda財団が約866人の市民とともに、同国政府の温暖化対策が不十分だとして、2013年に訴訟を提起。効果的な温暖化対策を実施するには、2020年までに40%削減(90年比)が必要と主張した。2015年の一審判決は原告側に軍配をあげ、同国政府は、国内の石炭火力発電所を2030年に全部閉鎖する決定等を打ち出した。

 

 しかし、一審判決後も、同国の排出量削減は2012年以降、13%削減レベルにとどまっており、 ほとんど変わっていない。このままでは一審の判決が支持した25%削減も満たせないとして、政府は控訴していた。http://rief-jp.org/ct8/79776

 

2審連続の原告勝訴を喜ぶ原告関係者たち
2審連続の原告勝訴を喜ぶ原告関係者たち

 

 裁判長のMarie-Anne Tan-de Sonnaville氏は、「政府は国民を気候変動の激化から守るための手段を講じる法的責務を負っている」「気候変動による大きな危険性が起きそうなことを考えれば、政府は温室効果ガス排出量を削減するために、より野心的な対策を短期間に講じなければならない」などと指摘した。

 

 控訴審判決は、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が8日公表の特別報告で、温室効果ガスの排出ペースが現状のまま進むと、早ければ2030年にも世界の平均気温は「1.5℃上昇」の努力目標に達し、自然災害の多発化、激甚化を招くと警告したことを受けた形となった。

 

 今回の判決は、温暖化の進展に対して、政府の対策が後手に回っていることに警告を与えもので、オランダ政府だけの問題ではなく、日本を含む各国政府の政策対応力が現実に追い付いていないことを示すものとなった。

 

 原告のUrgenda財団の担当者、Marjan Minnesma氏は、「IPCC報告が指摘するように、われわれは従来以上に温室効果ガスを削減を緊急に実施擦ることを求められている。オランダは低地の多い国であり、海面上昇リスクを抱える最前線にいる。政府自身の試算でも最悪シナリオでは、今世紀末には海面は2.5ー3mの上昇が想定される。今こそ、われわれは一致協力して気候変動との闘いに向き合わねばならない」と強調している。

 

 注目されるのはオランダ政府が最高裁に上告するかどうかだ。ただ、オランダの司法当局は保守的との評価が定着しており、その控訴審が一審を支持していることから、最高裁に上告しても勝ち目がないとの見方が有力になっている。にもかかわらず上告すると、政策責任を放棄した時間稼ぎとの批判を受け、政治的な損失を引き起こす可能性もある。

 

 オランダ政府が控訴したのは、「司法が政府の気候政策の設定プロセスに関与するべきではない」との意味もあったとされる。つまり、司法は行政の権限に介入し過ぎ、という反論だった。控訴審はそうした政府の姿勢をも一蹴し、「政策責任をとらない政府」に2枚目のイエローカードを突き付けたわけだ(2枚だから政権交代を暗に求める「レッドカード」ともいえる)。

 

 オランダ政府の敗訴は、パリ協定の目標順守ということに改めて関心を向けるものでもある。パリ協定が掲げた国際目標は、産業革命前からの世界の気温上昇を2℃より十分に抑制し、できれば1.5℃未満に抑える努力をするというものだが、実際に各国がパリ協定で約束した国別削減目標をすべて合わせてもこれらの数値を達成できない。

 

 つまり、各国の国内目標は日本の目標を含めて、目指す目標の達成にはほど遠いにもかかわらず、政治的な合意を優先したものなのだ。オランダ政府もEUの加盟国全体が参加できるよう、各国の達成可能性を加味して自国の目標を設定したという経緯がある。協定から離脱を決めたトランプ米政権は論外だが、協定にとどまっている各国の温暖化対策も不十分だというのが、原告の主張であり、控訴審が認めた点である。

 

 オランダの一審判決後、同様の訴訟が、ノルウェー、パキスタン、アイルランド、ベルギー、コロンビア、スイス、ニュージーランド、米国などで、提起され、政府の温暖化対策の不備を問う訴訟が世界中で続いているのも、こうした現実が背景にある。http://rief-jp.org/ct7/73027

 

 日本はどうか。日本の温室効果ガスの排出量は2016年度確報値で前年度比1.2%減の13億700万㌧(CO2換算値)で3年連続減少していると、環境省は発表している。だがEU各国が基準年とする90年比では2.7%増となっている。日本政府が掲げる2030年度目標の2005年度比26.0%削減の国内目標も、パリ協定の1.5℃ー2℃目標の達成とは直接つながらず、限りなく「ほど遠い」。