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今年2018年のCO2排出量の伸び率、過去最高の可能性。前年比2.7%増に。国連主導の科学者連合の共同論文が指摘。COP24会議で公表(RIEF)

2018-12-06 15:51:22

GHG16キャプチャ

 

   2018年の世界のCO2排出量が、記録されたデータでは過去最高の前年比2.7%増に達する見通しであることが、国連主導の世界の気候問題科学者の共同論文の公表でわかった。17年度の1.6%増を1%強上回ることになる。CO2増加の主因は自動車の増加と石炭使用の再上昇による。CO2排出量は2016年までの3年間は横ばい状態となり、17年に増加していた。その基調が続くか注目されていたが、増加基調の加速化が明瞭になった。

 

 共同論文は学術誌「地球システム科学データ(Earth System Science Data)」に発表された。論文は80人近くの科学者が共同執筆した。日本の研究者も加わっている。ポーランドのカトヴッツで開いている国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)の場でも明らかにされた。論文は「世界の気候変動との闘いは『完全に脱線している』」と警告している。

 

 CO2排出総量は、17年の36.2G㌧(90年比63%増)に比べて、37.1G㌧に増加する見込み。このうち中国の排出量が最も多く、全体の27%を占める10.3G㌧、ついで米国が14%の5.3Gトン、EU(28カ国ベース)9%の3.5G㌧、インド7%の2.6G㌧、残りの41%は日本を含むその他の国の排出量で、15,3G㌧になるという。

 

2017年の世界の排出量上位4カ国・地域の推移。4カ国で世界全体の 58%を排出。中国(27%), 米 (15%), EU28 (10%), インド(7%)

 

 前年からの伸び率でみると、最大排出国の中国が4.7%増と、平均伸び率の倍以上も伸びる見通し。米国も、平均を上回る2.5%増、インドは中国をもう上回る6.3%増となりそう。EUはほぼ横ばいだが、これまでの減少傾向に比べると、減少が止まりそうな様相でもある。

 

 日米欧の先進OECD諸国のCO2排出量は90年比で全体でも5%にとどまる。一方それ以外の新興・途上国からの排出量はほぼ倍増している。ただ、1870年から2017年の超長期の累積排出量でみると、もっとも多いのは米国で全体の25%、ついでEUの22%、中国13%、ロシア7%、日本4%、インド3%となっている。

 

 論文の筆頭執筆者で、英イーストアングリア大学(University of East Anglia)のコリーヌ・ルケレ(Corine le Quere)所長は「CO2排出量がグローバルに増えていることは懸念だ。温暖化による気候変動に対処するには、増加ではなく減少させ、最終的にはゼロに導かねばならないのに、そうした傾向が全くみられない。早急に削減行動を強化せねばならない」と強調している。

 

1870年~2017年の累積CO2排出量
1870年~2017年の累積CO2排出量

 

 今回の増加基調の鮮明化で明らかになったのは、中国が一時手控えていた石炭火力の稼動を再開し、CO2排出量を増大させていることと、伸び率で中国を上回る勢いのインドのように経済成長の高い新興国・途上国でのエネルギー需要が高まっていること、さらには世界経済全体の成長の結果として、自動車の使用増で石油需要の増加していることなどだ。再エネ市場もグローバルに成長してはいるが、経済活動の活発化によるエネルギー需要を満たすには力が足りず、化石燃料依存がむしろ高まったといえる。

 

 ルケレ所長は、今回の研究論文によって、過去5~6年間に見られた世界排出量の変動が、石炭消費量の変化を反映していることが明らかになったと指摘している。14~16年の3年間の横ばいは、中国のエネルギー政策の修正が影響したとみられる。

 

 国内でのPM2.5汚染が深刻な中国は、新規石炭火力の建設に慎重な姿勢を続け、2016年には国家発展改革委員会(NDRC)と国家エネルギー局が、既に承認されたプロジェクトを含め、15の地域での新規の石炭火力発電所の建設中止措置などをとった。この措置は、2030年前後に、GHG排出量をピークアウトさせるとの習近平主席の国際公約を踏まえたものだった。http://rief-jp.org/ct10/81678

 

 しかし再エネ転換は発電だけでなく、国内の送配電網と蓄電設備の整備を伴う必要があることから、思ったほどには拡大していないとみられる。今年上半期の国内での石炭消費量は前年比3.1%増と上向き、その間の電力需要は9.4%増と大きく伸びている。「中国の石炭」をどう抑えるか、が改めて国際的課題になってきたといえる。

 

 国民一人当たりのCO2年間排出量は米国が17年のデータで16.2㌧で最大。人口の多い中国は一人当たり排出量は少ないとされてきたが7.0㌧まで上昇し、米国の43%。EUとは同レベルにまでなっている。世界平均は4.8㌧。インドは1.8㌧と低い。

 

https://www.earth-system-science-data.net/about/news_and_press/2018-12-05_global-carbon-budget-2018.html