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秋田港石炭火力発電所計画で、事業者・丸紅の環境アセスメント準備書に環境省が「再検討」要請。パリ協定での政府公約に抵触の恐れ。環境省が「本気で阻止」できるか正念場だ(RIEF)

2018-10-04 07:00:53

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 環境省は、商社の丸紅が中心になって事業化を進めている「秋田港火力発電所(仮称)建設計画」の環境影響評価準備書に対して、「世界の潮流に逆行するような、地球温暖化対策が不十分な石炭火力発電は、是認できなくなるおそれもある」と懸念を示す意見を出した。丸紅は先月、「脱石炭火力事業」方針を公表しており、その実行力が問われる情勢だ。

 

 対象となる秋田港での石炭火力発電所計画は、丸紅と関西電力系の関電エネルギーソリューションが事業者。秋田港内の秋田市所有地に、石炭を燃料とする発電量65万kWの発電所を2基建設し、総出力130万kWの火力発電所を2024年に稼働させる計画。同事業により新たに年間866万㌧のCO2排出量の増加が見込まれる。

 

 環境省は、環境影響評価法及び電気事業法の規定により、出力11.25万kW以上の火力発電所の設置や変更工事の場合、事業者の環境影響評価準備書に対して経済産業相に意見を述べることができる手続きになっている。

 

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 環境大臣名での意見は、わが国がパリ協定で2030 年度に2013 年度比 26.0%減(2005 年度比 25.4%減)の温室効果ガス削減目標を掲げて、さらに長期的目標として2050年までに80%削減を目指す必要があることを指摘。世界の潮流に逆行するような、地球温暖化対策が不十分な石炭火力は、是認できなくなるおそれもあるとの考えを示した。http://www.env.go.jp/press/106008.html

 

 そのうえで、①(事業者は)石炭火力は環境保全面からの事業リスクが極めて高いことを改めて強く自覚し、2030年度以降のCO2排出削減の道筋が描けない場合は事業実施の再検討を含め、あらゆる選択肢を検討する②高効率のガス火力等を有するグループ会社等との共同実施での目標達成を目指すとしているものの、引き続き達成に向けた努力が必要不可欠③大気環境、水環境及び廃棄物に係る適切な環境保全措置の検討の必要――等を求めた。

 

 環境省は、2015年11月13日には事業者が提出した配慮書に対しては「是認できない」と明確に回答している。しかし、丸紅等はその後、大幅な事業見直しもなく、今回の環境アセスメント手続きに移行している。そうした経緯を踏まえると、今回の環境省意見はわかりにくい表現だが、「パリ協定での日本政府の国際公約からすると、このままでは認められない」と読むべきだろう。

 

 丸紅は先に公表した脱石炭火力方針で、①新規石炭火力事業には原則取り組まない②石炭火力発電事業によるネット発電容量を2030年までに半減させる③再エネ発電を2023年までに倍増させるーーなどを公約した。ただし、BAT(Best Available Technology)として「超々臨界圧発電方式(USC)の石炭火力で、かつ政府などの国家政策に合致した案件は検討する場合もある」との例外規定を設けている。http://rief-jp.org/ct10/82894

 

 丸紅は、今回の秋田港の事業もこうした例外規定の対象との立場を主張するとみられる。そうなると、政府のエネルギー政策の中で、秋田港の事業が必要不可欠かどうかについて、経産省が明確な判断を示す責任がある。パリ協定以降、グローバルに脱炭素政策の勢いは加速している。2050年までに国の温室効果ガス排出量をゼロにする「カーボン・ニュートラル連合(CNC)」に賛同する国は19カ国を数える。日本の対応も迫られている。http://rief-jp.org/ct8/83367

 

 気候関連NGOの気候ネットワーク(KIKO)は「われわれは、丸紅の『脱石炭火力方針』については、例外規定が『抜け穴』になる可能性を指摘していた。まさに本事業案件は、その抜け穴に該当する。本来の『脱石炭』の方針に沿って、本事業の推進姿勢を改め、計画を中止する必要がある」と指摘している。https://www.kikonet.org/info/press-release/2018-10-01/Opinion-on-Akita-coal-plant

 

 KIKOは丸紅の事業が、2024年に稼働する予定であることも重視している。火力発電所の操業期間は30年を超えることから、同事業は80%削減を実現しなければならない長期目標の2050年を超えて発電することになる。「大量のCO2排出を固定化させかねない」と警戒している。

 

 ただ、これまでの石炭火力発電事業への環境アセスメント手続きでの環境省意見が、中止を示唆し、是正を求める内容であっても、それらの意見が十分に事業計画に反映するとは限らないとの指摘もある。環境省の「強い意見」は、実は環境行政を担当する同省の「立場」を守るため、両省が「事前に表現をすり合わせている」との見方だ。http://rief-jp.org/blog/75911

 

 そうだとすると、市民、国民を愚弄するアセス手続きということになる。新たに環境大臣に就任した原田義明氏の手腕が問われる。

 

https://www.kikonet.org/info/press-release/2018-10-01/Opinion-on-Akita-coal-plant

http://www.env.go.jp/press/106008.html