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木質バイオマスエネルギーとSDGsとESG投資(竹林征雄)

2018-08-02 00:35:53

SDGsキャプチャ

 

    SDGsという言葉は、国際連合発信で世界共通言語となり、小学校の教科書に載る時代となった。SDGsは、「2030年までに達成すべき17の環境や開発に関する国際目標」のことで、「持続可能な開発目標」Sustainable Development Goalsの略称である。

 

 その目標第7番は「すべての人々が、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」とあり、さらに「再生可能エネルギー(以下再エネと記述)の割合を大幅拡大、国際協力、関連社会インフラ整備・投資促進を図る」と謳われている。

 

  開発途上国には11億人の人々が電気のない生活を、そして焚き木や乾燥畜糞などで炊事する人々が27億人も存在している。先進国の人々は、瞬時に照明、テレビ、煮炊きがスイッチやコンセントにプラグを入れることで行えることに全く無関心、無意識である。

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 これらを踏まえ、今一度日本は、しっかりとエネルギー問題に向き合わなくてはならない。それは、化石燃料は有限枯渇性地下資源で、かつ地球温暖化を加速させるエネルギー資源だからだ。それに引き換え、木質バイオマスは、きちんと森林管理をするならば「循環再生可能、温暖化ガス吸収、熱電創出、まちづくり、産業雇用」などと複合的に役に立つ大変な資源であり、日本は世界先進国中第3位の森林面積率67%、森林蓄積量53億㎥を保有する資源大国だ。

 

 再エネに関して、国内企業はPKS消費型発電などを行う事業から、開発途上国へ出かけ再エネ導入技術支援、再エネ発電拡大実施がSDGs#7に寄与することとなる。国内では、小規模木質バイオマス熱電併給施設の設置が、温暖化対策や地域おこしに寄与し、安全な再エネを自分の手にすることが持続可能な開発となる。ここで日本が自覚すべきことは、「日本は今や、環境後進国であり、自然エネルギー、再エネ導入後進国である」ことを認識すべきである。

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 SDGsには「安価で信頼できるエネルギー」と明示されている。考えることは、木質エネルギーの低コスト化である。この40年間で森林蓄積量は2.2倍に増加しているにも拘らず、森林より材を伐り出す人々も少数で、林業という産業は存在しないも同然。従い、山は荒れ、災害の原因ともなり、生態系循環も維持できない事態となりつつある。従い、次のビジネスチェーンの製材関連産業なども低調と言わざるを得なく、高コストとなる状況下にある。

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SDGs 7と13
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 SDGs全体の根幹であり、達成の鍵を握るのが、目標第13番「気候変動に具体的な対策を」であり、これと密接に関係、表裏一体とも言えるのが目標#7である。この目標#13と#7は、他の目標8つとも関連し、Keyともなるものである。

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 目標を遂行するには金融の力が大変重要であり、ESG投資という考えが世界で広がっている。これは、Environment、Social、Governanceの頭文字であり、環境、社会、企業統治を重視、配慮している企業を選別投融資することであり、企業の持続的成長、中長期的収益や企業価値向上につながり、財務諸表などからは見えにくいリスクを排除できる投資である。

 

 一例は、温暖化ガスを大量に排出することから座礁資産と表現される石炭産業や石炭を燃料とする火力発電所が、その範疇に入り、融資を引き揚げ、中止となり始めた。世界の投融資の3割が既にESG投資になり、その額は2500兆円を超える規模だ。

 

 この様なことから、森林資源を大いに活用しカーボンフリーの社会を目指すことが日本の責務とも言える。

 

(「バイオマス白書2018」から転載http://www.npobin.net/hakusho/2018/

 

スペーサー竹林 征雄(たけばやし・まさお) NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク副理事長。荏原製作所、アミタ取締役等を歴任。