HOME |論文:「日本における脱炭素トランジション・ファイナンスの可能性―石炭火力債務証券化を中心に―」(明日香壽川、藤井良広) |

論文:「日本における脱炭素トランジション・ファイナンスの可能性―石炭火力債務証券化を中心に―」(明日香壽川、藤井良広)

2022-02-12 19:17:52

sendai001キャプチャ

   <要旨>

 石炭火力発電の早期廃止を促すような投融資のスキームとして、米国では州政府等の自治体がエネルギー移行を主導する形での石炭火力債務証券化(Coal-Debt Securitization: CDS)が活用されている。石炭火力発電所を抱える電力会社の債務を証券化することによって、電力事業者は石炭火力の閉鎖に伴うコストの引き下げと、代替する再生可能エネルギー発電事業への投資資金を手に入れることができる。一方で消費者等の電力需要家はエネルギー転換に伴う電力料金の引き上げ等のリスクを回避できる。自治体は同一地域内でのエネルギー転換を主導することで、雇用の継続、地域コミュニティの活性化等の維持が可能となる仕組みである。

 

 一方、日本では石炭火力の閉鎖処理と再生可能エネルギー発電事業の開発はつながっておらず、ともに資金調達上の課題を抱えている。国が掲げる2030年温室効果ガス排出量46%削減(2013年比)を実現するには、化石燃料発電の早期廃止と再エネ電力の早期拡大の二つが必須の条件であることを考えると、日本の場合、米国のCDSと同等のスキームを国主導で推進するような法的フレームワークの設定が検討対象になる。石炭火力の閉鎖と再生可能エネルギー発電事業拡大を直接的に結び付けるCDSは、真のトランジション・ファイナンスを主導する役割が期待され、ESG債市場の拡大にもつながるため、内外の機関投資家等の投資を促進する期待も出てくる。

 

明日香壽川:東北大学東北アジア研究センター・同大学院環境科学研究科教授 asukajusen@gmail.com

藤井良広:一般社団法人環境金融研究機構代表理事(元上智大学地球環境学研究科教授) green@rief-jp.org