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出版『持続可能性とイノベーションの統合報告』(越智信仁著、日本評論社)

2016-03-23 22:47:34

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 本書は、ESG情報と財務情報を包括的に取り入れた情報開示手段の統合報告の意義を説いている。類書はいくつかある。だが、本書が秀逸な点は類書にみられない思い切った発想と、その発想を多様なツールを用いて論証を試みるチャレンジングな姿勢にある。

 

 たとえば、経営論と会計論を土台としながら、CSRを企業に規律付けするためにソフトローの枠組み形成の重要性を示すほか、ESG評価を踏まえたCSR経営の規範を形成するうえにおいて、企業のステークホルダーとしてのNPOの機能を、ゲーム論的方法論を使って論証を試みるなどの“冒険”に取り組んでいる。また、企業価値の評価に「知的負債(負のインタンジブルズ)」の概念を導入するなど、既存の学問領域のカベを苦にしない柔軟な考察を相次いで展開している。

 

 著者は、「正当性理論とシグナリング理論が接合する持続的企業価値創造に向け、ディスクロジャーのあり方のみならず、開示と同期発火で経営革新が求められることを論証した」と述べている。研究の土台となる先行研究の渉猟も、学際性に富んでおり、資料的価値も高い。本書は、日本NPO学会から学会賞(優秀賞)している。

 

『持続可能性とイノベーションの統合報告~非財務情報開示のダイナミクスと信頼性』

(越智信仁著、日本評論社。2015年3月1日、本体価格4,000円)

 

 

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