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第4回(2018年)サステナブルファイナンス大賞受賞式の開催。大賞に日本生命、優秀賞3件、グリーンボンド賞4件、地域金融賞1件(RIEF)

2019-01-24 01:07:02

SBf1キャプチャ

 

 一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)は23日、第4回(2018年)サステナブルファイナンス大賞の受賞式を開いた。大賞には、石炭火力事業への新規融資を原則禁止等のネガティブスクリーニング導入のほか、7000億円のESG投資の数値目標を掲げた日本生命保険に授与された。このほか、優秀賞3件、グリーンボンド賞4件、地域金融賞1件がそれぞれ表彰された。

 

  同賞の審査は、池尾和人審査委員長(立正大学経済学部教授)のほか、金融と環境の両分野の専門家合計10人が、応募金融機関の活動内容を6項目の基準に基づいて採点、スコア化した定量評価と、審査時の定性評価を加味した。専門性と透明性を確保した評価を経て、選考した。

 

第4回サステナブルファイナンス大賞を受賞する日本生命の秋山直紀財務企画部長
第4回サステナブルファイナンス大賞を受賞する日本生命の秋山直紀財務企画部長

 

 池尾委員長は「昨年は、環境金融にかかわる取り組みの一層の拡大が実感できた。とりわけグリーンボンドの発行が相次ぎ、それぞれの業界で先陣を切った企業の中から特に顕彰すべきと判断された先に、グリーンボンド賞を2018年の特別賞として授与することにした。また『脱石炭』の動きも強まってきた」と総括している。

 

 同委員長が指摘するように、グリーンボンドの発行は年間33本で総発行額は4848億円と、前年の9件、2681億円を大きく上回った。http://rief-jp.org/ct1/85945。単に量的に拡大しただけではない。昨年の特徴としては、金融機関だけでなく、企業の動きも活発だった点をあげることができる。

 

 今回の表彰で、優秀賞の丸井グループや、グリーンボンド賞の日本郵船などがその代表例だ。丸井の場合、再生可能エネルギー電力の調達を自らスタートアップの事業者と連携して行い、それらの資金調達をグリーンボンドでまかなうという積極的な取り組みを展開した。

 

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 日本郵船は、グリーンボンドの発行だけでなく、英非営利法人のClimate Bonds Initiativeによる船舶部門のクライテリアづくりに自ら参画するなど、サステナブルファイナンス市場形成に積極的に取り組んできた点が評価された。

 

 不動産投資信託(J-REIT)のグリーンボンド発行が相次いだのも一つの特徴だった。同じくグリーンボンド賞を得た日本リテールファンド投資法人(三菱商事・ユービーエス・リアルティが運用)が同セクターでのグリーンボンド発行に先鞭をつけたことで、J-REIT業界全体での発行が広がった。リーダーシップの必要性である。

 

「脱石炭火力」を明確にした金融機関が複数出たのも、昨年の特徴だった。大賞の日本生命のほか、優秀賞の三井住友信託銀行も、新規の石炭火力発電事業への投融資の原則見合わせを宣言した。今回は賞から漏れたが、りそなホールディングスもそうだった。

 

 これらの金融機関は、石炭火力を新規建設すると40年間は操業することになり、その間の温暖化の加速によって、投融資をした金融機関側も、操業期間中に移行リスク(規制の強化によるコストアップ)を被る可能性を踏まえて、経済合理的に判断したと思われる。

 

 規模の大きな金融機関が必ずしもサステナブルファイナンスの領域ではトップランナーではないことを知らしめたのが、第一勧業信用組合(東京)だ。トリプルボトムラインの追求を目指す国際的な金融組織「グローバル・アライアンス・フォー・バンキング・オン・バリュー(GABV)に日本で初めて正式参加した。「信頼される金融機関」は規模ではない、行動だ、というわけだ。

 

 地域金融賞に選ばれた大分県信用組合もそうした「地域の信頼ベース」の取り組みが評価された。過疎化、高齢化が進む地域での、人々の健康寿命を延伸させるという、地味だが、一人一人にとって大切な取り組みを展開してきた。地域金融機関ならではの知恵といえる。

 

 メガバンクで気を吐いたのが、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)。年間を通じてグリーンボンドを3件も発行し、同市場の流動性供給の役割を担った。MUFGはグループ全体でみれば、サステナブルファイナンス大賞を3年連続受賞した。三井住友フィナンシャルグループは個人向けの外貨建てグリーンボンド発行で、投資家のすそ野の拡大に貢献した。

 

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 <受賞企業と概要>

大賞日本生命保険 「石炭火力発電事業向け新規投融資の原則禁止を盛り込むなど、投融資にネガティブ・スクリーニングを導入する一方で、ESG投融資には7000億円の数値目標を設定、投資先へのエンゲージメント活動にも力を入れて実践するなど、ESG投融資市場の発展に総合的に貢献した」

 

優秀賞:三井住友信託銀行 「石炭火力発電向け新規投融資の原則禁止のほか、信託機能を活用したグリーントラストを開発するなど、投資家のグリーン投資に応える対応を展開した」

 

優秀賞:丸井グループ 「事業活動で使用する電力をすべて再エネ電力とする『RE100』に加入するとともに、再エネ電力調達のため小売業界初のグリーンボンドを発行するなど、一貫性を持った再エネ取り組みを実践した」

 

優秀賞:第一勧業信用組合 「持続可能な経済・社会・環境の発展への貢献を目指す国際金融組織『グローバル・アライアンス・フォー・バンキング・オン・バリュー(GABV)』に日本の金融機関で初参加。他の金融機関とのネット化で地域創生に貢献した」

 

グリーンボンド賞:日本郵船 「外航海運業界で初めてグリーンボンドを発行。船舶のグリーン性評価の国際的活動にも加わるなど、ボンドの発行を超えた取り組みを評価」

 

グリーンボンド賞:日本リテールファンド投資法人 「不動産投資信託ファンド(J-REIT)として初のグリーンボンドを発行、他のJ-REITの追随を誘い、2018年のグリーンボンド発行“ブーム”の軸となった」

 

グリーンボンド賞:三菱UFJフィナンシャル・グループ 「年間を通じて3回のグリーンボンドを発行。日本勢によるグリーンボンド発行市場の流動性向上に貢献した」

 

グリーンボンド賞:三井住友フィナンシャルグループ 「国内金融機関として初の個人向けグリーンボンドを発行。グリーンボンドへの投資家層の多様化に貢献した」

 

地域金融賞:大分県信用組合 「過疎化、高齢化が進む地域にあって、地域自治体とともに健康寿命を延伸する活動に取り組み、『健康』をキーワードとした資金循環システム創造に取り組んでいる」