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みずほフィナンシャルグループの「新規石炭火力発電向け融資停止」等のサステナブル方針、環境NGOは概ね歓迎。ただ、例外措置の扱いや電力会社への一般融資等で懸念も(RIEF)

2020-04-16 00:00:09

GP22キャプチャ

 

 みずほフィナンシャルグループが新規石炭火力発電事業への投融資を停止する方針を打ち出したことに対して、環境NGO各団体は、それぞれ概ね歓迎を表明している。同時に、石炭火力以外の化石燃料産業全体への投融資見直しなど、さらなる追加措置を求めている。

 

 (写真は、スイス・ダボスでの世界経済フォーラムで、日本の3メガバンクの石炭火力発電向け融資停止を呼びかける環境団体=今年1月)

 

 みずほFGに対して株主提案を出している気候ネットワークは、「みずほが『気候変動が金融市場の安定にも影響を及ぼしうる最も重要なグローバル課題の一つであるとの認識』に基づいた検討を行い、今回の方針強化の発表に至ったことを大いに歓迎する」とのコメントを出した。

 

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 特に、石炭火力新規建設への投融資の停止のほか、与信残高削減目標の設定や厳格化、気候リスクの情報開示の方針表明、それらを実施するガバナンス体制の強化などへ踏み込んだことは、「喫緊な対応が求められる気候変動に対し、脱炭素社会に向けた金融機関としての役割を認識し行動を強化するものであると評価できる」とした。そのうえで、「国内金融機関ではみずほFGが最も意欲的な方針を持つことになった。今後、他の金融機関も少なくとも同様の方針を掲げるよう求めたい」と、他行の追随を求めた。

 

 レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)も「責任ある金融」シニアキャンペーナーの ハナ・ハイネケン氏が「今回の新方針で、みずほは日本の銀行業界で新たな基準を設定した」と評価するとともに、「石炭に関する方針で例外が残るものの、森林破壊の要因となる産品に対して『森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ方針』を適用、石油・ガス、石炭採掘における社会的・環境的保護等が強化されたことを歓迎する」と、みずほが幅広い環境・社会的対応を打ち出したことを評価している。

 

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 350Japanは「(発表は)現在の与信残高3000億円を段階的に減らし2050年までにゼロにするなど、メガ銀行としては初めて具体的に期限と金額に言及している。今回の方針は、昨年の方針から脱石炭へ確実に前に踏み出したものと、それなりに評価できる」としている。

 

 グリーンピースジャパンもエネルギー担当のハンナ・ハッコ氏が「みずほが、他の金融機関と同様、石炭火力発電所の新規建設事業への投融資を行わないことを歓迎する。 ただし、これは最初の一歩に過ぎない。脱炭素に真剣に取り組むのであれば、みずほは、化石燃料産業を支援するすべての投融資について取り組む必要がある」としている。

 

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 「歓迎する、しかし」という点で各団体の要望は共通している。追加要望の一つは、新規の石炭火力発電事業への投融資は行わないとしたが、「運用開始日以前に支援意思表明済みの案件は除外」するとした点と、途上国等からの要請があった場合や、技術革新を進めるための(石炭火力への)取り組み等は、例外扱いとしている点だ。

 

 各NGOが建設反対で力を入れているベトナムでのブンアン2石炭火力発電事業は、三菱商事が主導してすでに計画が打ち出され、みずほも他のメガバンク等とともに融資支援を示している。気候ネットワークは「『投融資を行わない』としながら、ブンアン2石炭火力発電事業などが除外されれば、大きな抜け穴と言わざるを得ない」と指摘している。

 

 350 Japanも「ブンアン2石炭火力発電事業からはスタンダードチャータードなど海外の銀行が撤退する中、国際協力銀行と邦銀4行が融資を検討していると言われる。私たちのお金がこのような事業に使われることに抗議の声を上げてきたが、先行きは不透明」と警戒する。

 

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 RANのハイネケン氏は「(みずほが)気候危機対策に真剣に取り組むリーダーになりたいのであれば、改定方針にある2050年より早期の脱石炭を約束し、化石燃料の拡大と熱帯林破壊を促進するあらゆる投融資を停止する必要がある。ESGについて大々的に発表しながら、気候に悪影響を及ぼしたり、先住民族等の権利を侵害する企業に資金を提供し続ければ、それは偽善的だ」と指摘している。

 

 もう一つの論点となるのが、グリーンピースのハッコ氏が提起する「今回の新しい方針は、石炭関連企業の資金調達(コーポレートファイナンス)に制限を課していない。 みずほが、石炭などの化石燃料関連企業への世界最大級の資金提供者であることを考えると、これは大きな懸念点」という点だ。

 

 グリーンピースは、みずほだけでなく、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループなどのメガバンクに対し、海外の銀行の例にならい、石炭に依存する電力会社への一般的な融資も段階的な停止することを要請している。

 

「不名誉」を返上し、日本の銀行の「気候リーダー」になれるか
「不名誉」を返上し、日本の銀行の「気候リーダー」になれるか

 

 みずほの今回の発表ではTCFDのシナリオ分析に基づいて移行リスクを推計している。その試算で「中長期的には与信コストの増加を抑えられる」との結論を導き出した要因の一つに、「石炭火力等の投融資削減の効果で、長期的には炭素コスト等の軽減効果が業績に貢献する」と指摘している。そうだとすれば、石炭依存の高い電力会社への一般融資も、電力会社が脱炭素に向かわない限り、銀行のリスク管理上、減少させるべきとなるはずだ。

 

 RANのハイネケン氏は「新方針の適用後、みずほが問題ある企業に対しての無責任な投融資を止めるかどうかは今後の課題。方針は実施されて初めて価値がある」と注視する姿勢を示している。

 

 みずほに株主提案を出している気候ネットワークは、今回のみずほの方針を受けて、株主提案をどうするかについては「今回の方針について十分な検討を行った上で決定する予定」と説明している。

https://www.kikonet.org/info/press-release/2020-04-15/Mizuho_Coal_Finance_Policy

https://www.greenpeace.org/japan/nature/press-release/2020/04/15/13268/

http://japan.ran.org/?p=1604

https://world.350.org/ja/press-release/200415/