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みずほフィナンシャルグループ、初の「TCFDレポート」公表。シナリオ分析による2050年までの気候関連の移行リスクと物理的リスクの与信コスト増、それぞれ最大3100億円、520億円(RIEF)

2020-05-23 01:29:30

mIzuho1キャプチャ

 

 みずほフィナンシャルグループは、TCFD提言に基づく同グループの対応をまとめた初の「TCFDレポート2020」を公表した。みずほは4月に「サステナビリティへの強化」策を発表、その中で、移行リスクについての試算を公表していたが、今回のレポートでは物理的リスクの試算も盛り込んだ。

 

 TCFD提言に基づき金融機関が保有する資産の抱える移行リスクと物理的リスクを両方、試算して開示したのは、三井住友フィナンシャルグループに次ぐ。

 

 みずほのレポートでは、TCFD提言に沿った気候変動関連リスクと機会に対する同グループの対応として、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の提言ごとの対応を明記している。「ガバナンス」では、「気候関連のリスクと機会に関する組織のガバナンスを開示する 」。「戦略」では、「気候関連のリスクと機会が組織の事業、戦略、財務計画に及ぼす実際の影響と潜在的な影響について、その情報が重要(マテリアル)な場合は開示する」などだ。

 

みずほの炭素コストの推移
みずほの炭素コストの推移

 

 「戦略」において、 気候関連リスクとして、移行リスクと物理的リスクを位置付けている。移行リスクについては、「炭素税や燃費規制などの政策強化や低炭素等の技術への転換の遅れにより影響を受ける投融資先に対する信用リスクや、 化石燃料等へのファイナンに対するレピュテーション悪化によるオ ペレーショナルリスク等を想定」とした。

 

 もう一方の物理的リスクについては、「異常気象による当社資産(電算センター等)および 顧客資産(不動産担保等)の毀損によるオペレーショナルリスク、信用リスク等を想定」とした。

 

 こうしたリスクが同グループの金融資産に及ぼす影響を測定するために「シナリオ分析」で検証した結果、炭素関連セクター向け信用エクスポージャー(EXP)のEXP総額に占める集中度は7.3%だったとしている。

 

炭素排出量の多いセクターの移行リスクと物理的リスクの評価分類
みずほによる炭素排出量の多いセクターの移行リスクと物理的リスクの評価分類

 

 移行リスクのシナリオ分析は、CO2排出量の多い国内の「電力ユーティリティ」、「石油・ガス、石炭」セク ターを対象として、 国際エネルギー機関(IEA)によるStaticシナリオ(顧客の業績影響予想は、現状の事業構造を転換しないと仮定)とDynamicシナリオ(事業構造転換を行うと仮定)の2通りを使って2050年までの影響を分析した。

 

 その結果、与信コストの増加は、Dynamicシナリオで1200億円、Staticシナリオで3100億円となった。これら移行リスクに基づく与信コスト増の推計値は4月15日にすでに公表しており、今回のレポートにはそれらのデータを再掲した。http://rief-jp.org/ct1/101436?ctid=67

 

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 今回初めて公表した物理的リスク試算は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の RCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)とRCP2.6シナリオ(2℃シナリオ)を使い、 国内での台風・豪雨による風水災に伴う建物損傷率をモンテカルロシミュレーションで算出、担保不動産(建物)の損傷による同行の与信コストへの直接影響(担保価値影響)と間接影響(事業停滞影響)を分析した。

 

 その結果、 担保価値への影響は「限定的 」とし、事業停滞影響についても、2℃シナリオと4℃シナリオのどちらでも2050年までの与信コストは、最大520億円程度で、同グループとして対応可能な範囲に収まるとしている。

 

Mizuho08キャプチャ

 

 先行してTCFD提言に基づく移行リスクと物理的リスクを試算した三井住友フィナンシャルグループの場合、2050年までの移行リスクによる与信コストの増加額は600億~3000億円。物理的リスクによる増加は、300億~400億円と推計している。シナリオ分析手法も、同じIEAとIPCCの手法を活用している。両グループの推計値を比べると、ほぼ同レベルであることがわかる。http://rief-jp.org/ct1/98662

 

 みずほのレポートでは、気候変動リスクの管理について、総合リスク管理へ統合し、推計した物理的リスクや移行リスクを、信用リスク 管理やオペレーショナルリスク管理等の総合リスク管理の枠組みで 対応する体制をとる、としている。また、グループの経営に重大な影響を及ぼす「トップリ スク運営」として「環境・社会に配慮しない投融資」へのモニタ リングを継続するとともに、気候変動リスクについて、「顕在化は中長期的な時間軸だが数年内に対応が求められる重大なリスクの『エマージングリスク』として位置づける方針を示した。

https://www.mizuho-fg.co.jp/release/pdf/20200521release_jp.pdf

https://www.mizuho-fg.co.jp/csr/mizuhocsr/report/pdf/tcfd_report.pdf