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みずほフィナンシャルグループ、「サステナビリティ方針」公表。新規石炭火力融資停止に加え、2030年までにサステナブルファイナンス累計25兆円に。TCFDシナリオ分析も開示(RIEF)

2020-04-15 17:21:17

Mizuho22キャプチャ

 

 みずほフィナンシャルグループは15日、「サステナビリティへの強化」策をまとめた。新規の石炭火力発電向け融資を停止するなどの気候変動リスク管理強化のほか、環境・社会に配慮したサステナブルファイナンス総額を2030年度までに累計で25兆円を投じるとした。またTCFDによるシナリオ分析に基づいた2050年までの気候変動の移行リスクを試算、約1200億円~約3100億円の与信コストが増額するとした。物理リスクの影響は限定的とした。

 

 みずほは、これまでの企業行動規範に基づく「人権方針」に加えて、新たに「環境方針」を制定した。気候変動を含む環境への取り組みの軸となる課題認識や具体的な行動、脱炭素社会の実現に向けた気候変動への取組姿勢を明確化した、と説明している。http://rief-jp.org/ct1/101402

 

 同方針に基づき、石炭火力発電所の新規建設への投融資を停止すると明記した。石炭火力向け与信残高は現在、約3000億円あるが、2030 年度までに半減し、さらに2050 年度までに残高ゼロとする目標を示した。ただ、すでに投融資を表明している事業向けや、途上国等のエネルギー安定供給に必要不可欠で温室効果ガス削減につながるリプレースメ ント案件、エネルギー転換に資する次世代技術の発展等へのファイナンスは継続するとしている。これら「除外」案件の実際の取り扱いが今後の焦点になりそうだ。

 

 また石炭採掘セクターについては、Mountain Top Removal(山頂除去)方式での炭鉱採掘事業を投融資対象から除外するほか、気候変動に伴う移行リスクへの対応等を取引先とのエ ンゲージメントで確認するとした。石油・ガスセクターについての環境対応は、これまで非開示だったが、今回から開示対象とし、環境に及ぼす影響や先住民・地域社会とのトラブル等に配慮すること等を開示した。

 

Mizuho25キャプチャ

 

  サステナブルファイナンスについては、重点項目として、①環境配慮︓気候変動への対応促進と脱炭素社会への移⾏⽀援②健全な経済成⻑ : ⾦融資本市場の機能強化③産業発展とイノベーション︓円滑な事業承継、イノベーションの加速、レジリエントな社会インフラ整備、の3分野を定義づけた。

 

 対象となるファイナンスは、①環境・社会事業を資⾦使途とするファイナンス ② ESGやSDGsへの対応を考慮・評価、あるいは条件とするなどのファイナンス、とした。提供する金融サービスは、融資、引受、投資、運⽤の各手法。

 

 TCFD提言によるシナリオ分析は、これまで三井住友フィナンシャルグループが、移行リスク、物理リスクの両リスク試算を公表している。みずほの取り組みはそれに次ぐ。みずほは、国際エネルギー機関(IEA)のデータを元に、業績影響予想として現状の事業構造を転換しないシナリオ (Staticシナリオ)と、事業構造転換を行うシナリオ(Dynamicシナ リオ)の両シナリオ分析を実施した。

 

TCFDシナリオのセクター別の影響度
TCFDシナリオのセクター別の影響度

 

 それによると、2050 年までの与信コストの増加額はStaticシナリオで約1,200億円、Dynamicシナリオで3100 億円となった。この試算結果について、「事業構造転換を前提とするシナリオでは短期的な影響はあるが、中長期的には与信コストの増加を抑えられる」としている。特に石炭火力等の投融資削減の効果で、長期的には炭素コスト等の軽減効果が業績に貢献するとしている。

 

 物理リスクについては、国連の政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書のシナリオを元に、台風・豪雨によって発生する建物損傷率を算出、国内の担保不動産(建物) の損傷による与信コストを推計した。自然災害被害増大による直接影響では、担保不動産の損傷による与信コストへの影響は限定的、とした。顧客企業の事業停滞による銀行業務への影響は現在分析中、としている。

https://www.mizuho-fg.co.jp/release/pdf/20200415release_jp.pdf