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みずほフィナンシャルグループ、「TCFDレポート2021」公表。シナリオ分析対象に海外の電力、化石燃料等を追加。グループのScope3情報開示の試行も公表(RIEF)

2021-06-14 17:38:11

Mizuho0011キャプチャ

 

 みずほフィナンシャルグループは、「TCFDレポート2021」を公表した。今年5月に開示したサステナビリティアクションの強化策のうち、気候変動への対応強化の詳細や、シナリオ分析の対象セクターに海外の化石燃料事業、国内外の自動車産業等を追加してカバー率を高めた。また温室効果ガス排出量のうちScope3についての計測・管理の第一歩として、発電事業向けプロジェクトファイナンスによる排出量の試算も開示した。

 

 みずほは2020年度に3メガバンクの中で率先する形でTCFDレポートを公表した。今回が2回目のレポートとなる。

 

 前回と比べての改正点では、シナリオ分析対象セクターを拡大した点だ。まず、移行リスクにおいて、定性的評価で高リスクと評価された「電力ユーティリティ」、「石油・ガス、石炭」の両セクターの分析対象を、前回は「国内のみ」だったが「国内外」に拡大した。またビジネス機会が大きいとされる「自動車」セクターのリスク影響を「国内外」として加えた。

 

 物理リスクについては、従来の急性リスク(台風・豪雨による風水災等)に加えて、慢性リスク(熱中症・感染症の増加、海水面の上昇、干ばつの増加等)のリスク分析を新たに行った。

 

 その結果、2050 年までの与信コストの増加額は、2021年3月末基準のエクスポージャーが2050年まで一定と仮定した場合、約6200 億円とはじいた。 「電力ユーティリティ」、「石油・ガス、石炭」等の炭素集約型セクターでは、事業構造転換を前提とするシナリオ(Dynamicシナリオ)を適用した場合、短期的な影響はあるものの、中長期的には与信コストの増加を抑えられるという結果が出た。

 

 「自動車」セクターでは、OEMを対象に分析、EV投資による事業構造転換を進めた場合の与信コスト影響を確認した。その結果、与信コストの増加額は限定的との結論になった。自動車メーカーは、一定の財務負担が発生するEVシフトの過渡期を乗り切れば、事業継続性を維持し、 ビジネス機会が広がるとの見方だ。

 

 物理リスクの影響では、急性リスクのうち直接影響について「日本に上陸する台風の強度は増すが、上空気温との温度差縮小等で、台風の発生数(頻度)は減少するとの評価等から、担保不動産(建物)の損傷による与信コストへの影響は限定的とした。また事業停滞等の間接影響による2050年までの与信コスト増加額 は、累計で最大520億円程度。新たに試算した慢性リスクでは、熱中症増加等の影響による2100 年までの与信コスト増加額は、累計で最大40億円程度とした。

 

 炭素関連セクター向けの投融資は、21年3月時点で12.8兆円で全セクター向けに占める比率は5.5%。一年前の20年3月時点より、1.8%の減少(改善)している。みずほでは、石炭向け与信残高は2040年度にゼロ(従来は2050年)とする方針。

 

 サステナブルファイナンス・環境ファイナンスの目標は2019年度~2030年度累計で25兆円(うち環境ファイナンス12兆円)。2019~2020年度の累計実績では、サステナブルファイナンス7.1兆円(環境ファイナンス2.6兆円)の3.5倍(環境ファイナンスは4.6倍)に拡大する方針。

 

 グループ(8社)の国内外の温室効果ガス排出量(Scope1、2)は、2030年度までに2019年度比35%削減、2050年度に向けてカーボンニュートラルを目指す。同時に、投融資を通じた間接的なGHG 排出量を含めるScope3は、金融機関では大きな割合を占めることから、2022年度末までにScope3の中長期目標を設定する方針を示している。

 

 今回はその第一弾として、金融版SBTガイダンス・PCAF Standardを踏まえ、発電事業向けプロジェク トファイナンスによるGHG排出原単位を試算した。その結果、2020年3月末時点での同事業向けプロファイでのGHG排出原単位(発電 電力量当たりのCO2排出量)は364.51gCO2/kWh。この数値は、IEAのWEO2020での2019年時点の世界平均値・アジア太平洋平均値・日本平均値よりも低い水準としている。

 

https://www.mizuho-fg.co.jp/csr/mizuhocsr/report/pdf/tcfd_report_2021.pdf