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野村グループ、TCFDレポート公表。ポートフォリオに占める炭素関連資産(CRA)比率は1.40%、高移行リスクセクターは1.50%(RIEF)

2021-07-19 18:06:28

nomura001キャプチャ

 

 野村グループは、TCFD提言に基づいて気候リスクと機会、サステナビリティに関する報告をまとめた「TCFDレポート2021」を公表した。傘下の野村證券、野村アセットマネジメント等を軸として、内外市場での取り組みをTCFD提言に沿って評価・反映した状況等を報告している。ポートフォリオ全体に占める炭素関連資産(CRA)と高移行リスクセクター(HTA)の割合を開示したほか、シナリオ分析結果についても示した。

 

 同グループのTCFDレポート発行は昨年に続いて2回目。グループは昨年4月に米国のM&A助言会社のグリーンテック・キャピタルを買収、グローバルなサステナブルファイナンス市場での機動力を強化した。同年9月には、ホールセール部門で「ESGセクター・アペタイト・ステートメント」を公表し、サステナブルファイナンスの取り組み高度化を宣言した。同7月には、ESGにフォーカスした商品ラインナップも打ち出した。https://rief-jp.org/ct1/104946

 

 「ノムラ・グリーンテック」は、買収後の1年で、北米、欧州、アジアで27 件のM&Aや資金調達案件のサポートを行った。この中には、再生可能ディーゼル燃料と再生可能ジェット燃料の世界最大の生産企業のネステによるMahoney Environmentalの戦略的買収での単独アドバイザーも含まれる。ESG商品ラインアップの純資産残高は今年3月末で5800億円超。

 

 TCFD提言では、気候リスクを含むESGリスク要因を財務リスク管理の枠組みに組み込むことを求めている。これを踏まえ、同グループでは、脱炭素、移行の影響を受けやすい信用リスク・エクスポージャーとして、炭素関連資産(CRA:Carbon Rleated Asset) と、そのうちで移行リスクの高いセクター(HTR: Hign Transition Risk)の、それぞれのエクスポージャー比率の試算をした。

 

野村グループのCRAとHTRの比率
野村グループのCRAとHTRの比率

 

 その結果、グループのポートフォリオに占めるCRA比率は、1.40%(うちローンは0.80%)、HTRは1.50%(同0.70%)だった。HTRはセクターごとの比率も推計しており、上位セクターは運輸(0.40%)、電力(0.30%)、石油・ガス(0.30%)としている。

 

 シナリオ分析では、気候リスク等に関する金融当局者ネットワーク(NGSF)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のRCPシナリオ等を使った検証を行った。開示されたのは、NGSFによる「秩序(Orderly)シナリオ」「無秩序(Disorderly)シナリオ」「熱暑の世界(Hot House WOrld)シナリオ」に基づいた、物理リスクと移行リスクの「程度」を示した。

 

シナリオ分析の結果
シナリオ分析の結果

 

 「秩序シナリオ」では両リスクともリスク評価は「中」。「無秩序シナリオ」では、物理リスクは低いが、移行リスクが「高」となる。「熱暑シナリオ」では、物理リスクが「高」で、移行リスクは「低」となるとしている。3メガバンクはそれぞれのリスクについて、推計金額を示しているが、野村グループは「程度」のレベル提示にとどまっている。

 

 事業活動に伴うCO2排出量削減の取り組みでは、同グループは2018年度に、Scope1、同2を対象として2030年度32%削減(2018年度比)、2050年度65%削減の目標を設定している。このうち30年目標は、すでに2021年3月末で54.8%削減となり、前倒し達成したとした。ただ、Scope3の把握と計測については、「今後の対応」としている。

https://www.nomuraholdings.com/jp/investor/library/tcfd/2021/pdf/all.pdf