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三菱UFJ、三井住友信託、京都、滋賀の4銀行、GSユアサに対しサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)70億円供与。SPTsは2025年度でCO2削減率15%と「緩め」(RIEF)

2021-07-19 21:15:12

GSyuasa002キャプチャ

 

 三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行、京都銀行、滋賀銀行の4行は、自動車用電池等の製造・販売が中心のGSユアサ(京都)に対して、CO2排出量削減を条件とするサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)70億円を供給する契約を結んだ。「2025年度までにCO2排出量を15 %削減(18年度比)」をサステナビリティ・パフォーマンス目標(SPTs)とする。GSユアサは、目標達成時に受ける金利メリットを京都市民環境ファンドに寄付する、としている。

 

 ローンは期間5年。協調融資ではなく、各行が個別契約を結んで束ねる形としている。資金使途は事業資金。サステナビリティを測る重要指標(KPI)は「CO2排出量の削減」とし、同指標の達成目標(SPTs)として「2025年度までにCO2排出量(総量ベース、スコープ1、2)を15%削減(2018年度実績比)」とした。

 

 対象となるCO2はScope1(生産等からの直接排出量)、と同2(光熱費の使用に伴う間接排出量)とする。サプライチェーン等からの排出量のScope3は含めない。GSユアサは「GY環境長期目標2030」によって、2030年度までのCO2排出量を30%削減(18年度比)としており、今回は同目標を踏まえ、融資期間に合わせた25年目標を設定したとしている。

 

GSユアサの2030年目標(年間削減率は2~3%減)
GSユアサの2030年目標(年間削減率は2~3%減)

 

 融資金の返済期限到来までに、CO2排出削減が順調に進んでいるかどうかについて、銀行がチェックする複数回の判定機会を設ける。そのSPTs達成状況に応じて金利の優遇を受けることができる契約だ。ただ、同社のプレスリリースでは、金利の水準や優遇率等は開示していない。

 

 一方で、優遇金利分を京都市民環境ファンド(京都市環境共生市民協働事業基金)に寄付する。GSユアサは「ファンドへ寄付することにより、当社のESGへの取り組みによる企業価値向上に留まらず、寄付を通じて地域社会の健全で持続的な発展に貢献することを目指す」と説明している。

 

 しっくりしない部分もある。SLLの優遇分の使途をどう使うかは、企業の自主的な判断に委ねられる。ただ、SLLの本来の趣旨は、企業のサステナビリティを高めるために、金融が通常の取引とは別に、いわば「特別に支援する」点にある。そう考えると、今回のSLLで設定したSPTsは、企業の転換努力を目いっぱい引き出すほどのレベルか、という疑問が出てくる。

 

 同社の2030年目標30%削減は、国の30年目標の46~50%をかなり下回る。メーカー等に求められるサプライチェーンを含むCO2削減取り組みの視点も入っていない。欧米のSLLとは違って、金利も公表されていない。サステナブルファイナンスとしてのSLLの実績を積み上げたい金融機関と、「程々の条件なら借りてもいいか」という感じの企業側の判断が、合致したようにも見える。

 

 そうではなく、業界、同業他社をリードするサステナビリティ取り組みを実行するための資金調達なのだ、と自負できるようならば、どういうハードル(金利条件)を超えようとしているのかを、市場に周知し、サプライチェーンも、取引先も、顧客もが、そうした「挑戦」を応援したいと思えるような、情報開示をしてもらいたい。

 

https://www.gs-yuasa.com/jp/newsrelease/article.php?ucode=gs210711404913_1027