九州電力、トランジション・リンク・ローン500億円調達。みずほ銀等から。資金使途に再エネに加え、原発の「最大限活用」も。SPTの優遇金利分を経産省制度を活用して補填(RIEF)
2022-10-28 12:27:56
九州電力は27日、経済産業省の「成果連動型利子補給制度」を利用してトランジション・リンク・ローン500億円を、みずほ銀行を中心とするシンジケート団から借り入れると発表した。サステナビリティ・パフォーマンス目標(SPT)として「サプライチェーンGHG排出量(国内事業)を2030年度に65%削減(2013年度比)」を設定、これを達成した場合には、利子補給制度から最大0.2%の利下げ分の補助を得る仕組み。調達資金で再エネの主電源化や原発の最大限の活用をあげている。トランジション・ローンの資金使途で原発を盛り込むのは初めて。
(写真は、九州電力の玄海原発=佐賀県)
利子補給制度は産業競争力強化法に基づき設定されている。同制度をトランジション・リンク・ローンに活用するのは初めて。27日付で経産省の認定を受けた。
ローンは借入期間10年で、11月中に組成する。重要業績指標(KPI)のサプライチェーンGHG排出量は、国内事業でのScope1+2+3の合計とし、SPTは2030 年度に「国内事業におけるサプライチェーン GHG 排出量を 2013 年度対比 65%削減」、2050 年度に 「実質ゼロ」とすることを目指す、としている。
成果連動型利子補給制度の認定では、「低炭素で持続可能な社会の実現に向けて、再エネ・原子力の活用による電源の低・脱炭素化や電化を推進する」としている。また、事業の生産性向上の目標として、従業員一人当たりの付加価値額を2026年度には基準値(2021 年度)より 6%以上上昇さ せると設定。経常収支比率を100%以上とすることも盛り込んだ。
通常のサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)等では調達資金は特定の資金使途(UoP)と連携せず、調達企業の一般資金に充当できる。ただ、経産省の利子補給制度では事業適応計画を示す必要があり、その中で、「再エネの主力電源化や原子力の最大限の活用、火力発電所の低炭素化及び新技術開発、送配電ネットワークの高 度化、電化の推進に取り組む」と主な資金使途先を明記しており、資金使途の大枠が示された形だ。
リンク・ローンの場合、設定したSPTを予定通り達成すると、借入金融機関から金利引き下げ等の優遇措置を受ける仕組みをとる。今回の九電の場合、リンク・ローンの仕組みはSLLと同様だが、金利引き下げ分を金融機関に代わって同制度が九電に利子補給することから、金融機関は当初契約通りの金利収入を確保できる。金利引き下げ分は国民の税金負担になるわけだ。
資金を充当される再エネ、原発等の大枠は示されてはいるが、それぞれの事業のどのような用途に、どう使うのかという詳細な点は、明示されていない。税金を使う個別企業向けの補助金として支出するにもかかわらず、具体的な用途を開示しないのは制度のあり方としての妥当性を検討する必要があると思われる。同社が保有する原発は川内原発(鹿児島)、玄海原発(佐賀)の二カ所。