北米ノースダコタ州の原油パイプライン(DAPL)問題、稼働前に原油漏洩発覚。1か月も公表せず。反対運動の先住民族らは、適格な環境影響評価の実施命令を裁判所に求めている(RIEF)
2017-05-12 01:41:43
北米先住民の強い反対にもかかわらず、トランプ政権が開発許可を出したダコタ・アクセス・パイプライン(DAPL)計画は、ほぼ完成したが、本格的な石油搬送を前に、すでに油漏れが起きていたことがわかった。住民たちが指摘した環境汚染の懸念が稼働直前で現実化したことになり、トランプ政権の「ビジネス・ファースト」政策の杜撰さを浮き彫りにした。
まだ稼働していないDAPLからの油漏れは、4月6日にサウス・ダコタ州のポンプ設備で発生した。米政府によると84ガロン(約318㍑)の原油がポンプ設備内で漏れたという。政府は、漏れた原油は直ちに回収、クリーンアップしたため、周辺環境等への影響はない、としている。
しかし、この原油漏洩事故は、これまで発表されておらず、地元新聞が報道して初めて発覚した。DAPL計画に反対をし続けている先住民族のスタンディングロック・スー族の弁護士の Jan Hasselman氏は「パイプライン事業者は、最新鋭の設備なので原油漏れは絶対ない、問題は何もない、と説明してきた。だがすべてはウソだった。彼らは常にウソをつく」と指摘している。
スー族らは、パイプラインの建設に伴う環境や地下水等への影響を、しっかり評価する第三者による環境影響評価の実施を求めており、今回の原油漏洩事件はそうした評価の必要性を裏付けた形でもある。
ただ、サウス・ダコタ州の環境・資源局のBrian Walsh氏は「今回の原油漏洩はマイナーな量であり、吸い上げポンプの技術的な問題で生じたもので、パイプラインの不備ではない。ポンプ設備で小規模な油漏れが起きるのは、珍しくはなく、漏れても設備内に留まるので環境に影響はない」と説明している。
事業主体であるEnergy Transfer Partners社も、「今回の漏洩は環境に全く影響を与えていない、小規模なもの」とのスタンスだ。すでにパイプラインは完成しており、全面稼働に向けて実施している準備作業は予定通り進行させるという。
しかし、スー族の族長を務めるDave Archambault氏は「今回の原油漏れは、われわれが裁判所にパイプライン建設差し止めを求めている訴訟が、現実的なものであることを示す一例だ。この現実を裁判所はしっかり受け止めて、さらなる漏洩を防ぐ判断をしてもらいたい」と強調している。
DAPLはノースダコタ州から、サウスダコタ州、イリノイ州をつなぐ全長1886kmの原油パイプライン。ノースダコタ州の石油を運ぶ事業で、すでに9割以上が完成している。しかし、パイプラインがミズリー川を堰き止めて作った人造湖のオヘア湖の下を潜り抜ける計画のため、水質汚染の懸念などが周辺の先住民族から示されている。
オバマ前政権は退任直前に、住民の意向を受けて、事業者に対して代替案の検討を指示した。しかし、トランプ政権には石油業界との関係の深いメンバーが複数入っており、トランプ大統領も就任直後に、DAPLの建設許可を打ち出している。
DAPLの建設資金は、17の金融機関が総額25億㌦をプロジェクトファイナンス方式で融資している。金融機関の中には、シティバンクなどの米銀のほか、日本の三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクや欧州系の銀行なども参加している。一部の欧州系銀行などは、融資団から脱退している。http://rief-jp.org/ct7/68597
http://earthjustice.org/features/faq-standing-rock-litigation