パリ協定締結後の石炭火力発電向け融資額の1位は「みずほFG」。日本の3メガバンクが上位独占。株・債券引き受けを含めると中国勢が突出。環境NGOが「不名誉銀行のランキング」発表(RIEF)
2018-12-06 18:43:06
ドイツの環境NGOウルゲバルト(Urgewald)と、国際環境NGOのBankTrackは各国のNGOと共同で、新規石炭火力発電建設計画を支援する銀行と機関投資家を調べた報告書をまとめた。それによると、2016~2018年の3カ年間でもっとも多額の石炭火力向け融資を行ったのは、日本のみずほフィナンシャルグループ。2位は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、4位に三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)と、3メガバンクが「石炭バンク」の上位を独占した。ただ、株・債券の引き受け額を含めると中国の中国工商銀行(CIBC)がトップになる。
パリ協定締結後の16年から18年までの3年間で新たに稼動した石炭火力発電は92GW。さらに現在計画中がその7倍の6700GW分もある。これらが計画通りに稼動することになると、温暖化の加速は激化する。石炭火力の増大は、先に国連の科学者連合が明らかにしたように、新興国・途上国でのエネルギー需要の増大が背景にある。http://rief-jp.org/ct8/85288
NGOの調査では、グローバルな120の金融機関が新規石炭火力に投融資した額は3年間で4780億㌦を超えると指摘している。このうち、不名誉な1位の座に輝いたみずほFGの総融資額は128億㌦(1兆4464億円 )、MUFG99億㌦(1兆1187億円)、4位のSMFGは41.6億㌦(4700億円)。3位は中国の建設銀行の46.6億㌦が日本勢に割って入った形だ。
その他をみても、6位にインドネシアのBank Rakyat Indonesiaが、7位に中国銀行(bak of China)と、アジア勢が上位を独占している。日本の場合、国内での新規石炭火力発電計画が40件以上あるほか、アジアでの開発にも参画していることで、突出した融資量となっている。3年間の総融資額の3割を日本の3メガバンクで占める形だ。
欧米勢の多くは、石炭関連投融資の制限を公約している。だが、上位の石炭火力発電事業者への融資額の25%は欧州勢という。また融資ランキングでも、7位に米シティグループ(33.8億㌦)、8位英HSBC(22.6億㌦)、英スタンダードチャータード(22億㌦)、10位オランダING Group(19.4億㌦)、12位仏ソシエテ・ジェネラル(19億㌦)などとが名を連ねている。特に欧州勢は、「脱石炭」表明にもかかわらず、実際には個別案件に係っているという例が少なくない。
一方、中国は石炭火力からのCO2排出量が世界最大だが、銀行融資は全体の12%程度で日本の半分以下にとどまっている。中国の銀行が石炭配慮を重視しているのかと思いきや、実は、株式や債券発行の引き受け額を含めると膨大な資金を石炭産業に供給していることがわかる。
3年間に石炭火力発電事業者が発行した株、債券の引き受け額は3770億㌦に上る。このうち、中国の金融機関の引き受けは、中国工商銀行(ICBC)が最高の245億㌦、中国中信股份有限公司(CITIC)が190億㌦、中国銀行の182億㌦で、引き受けのトップ3を独占している。中国の銀行による引き受け額は全体の73%に達する。CIBCは引き受けと融資を両方あわせると260億㌦となり、みずほを総額で追い抜く。
引き受け業務での石炭火力事業者への資金供給では、みずほFGが52億㌦(17位)の実績があるほか、シティグループ60億㌦(161位)、HSBC52億㌦(18位)などとなっている。日本の3メガバンク全体では、引き受け額の5.2%を受けている。
調査は機関投資家による株式や債券の引き受けについての動向も調べている。今回の調査対象は、世界の主要石炭火力事業者120社に合計1390億㌦相当の株および債券を保有する1206の機関投資家を対象として調べた。
それによると、石炭火力発電事業にもっとも多く投資する機関投資家は、米大手資産運用会社のブラックロック。56の事業者の株・債券を110億㌦分保有している。2位は日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。41の石炭事業者に73億㌦を投資している。GPIFは最近、ESG投資促進を打ち出しているが、その一方で石炭投資にも力を入れてきたことが判明した。
ブラックロックを筆頭とする米機関投資家が保有する石炭火力発電事業者の株や債券投資額を合計すると、その割合は、同事業者の株・債券への投資総額の35%を占める。欧州の機関投資家は16%、日本勢は14%となっている。
http://world.350.org/ja/press-release/cop24-research/