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2018年(第4回)サステナブルファイナンス大賞インタビューシリーズ⑧三井住友銀行、国内金融機関初の個人向け外貨建てグリーンボンド発行で、グリーンボンド賞(RIEF)

2019-03-07 08:52:01

SMBC3キャプチャ

 

 三井住友銀行(SMBC)は、2018年末に外貨建てで個人向けのグリーンボンドを発行しました。日本の金融機関で個人向けに外貨建てグリーンボンドを発行したのは同行が初めてです。グリーンボンドのリテール市場での普及につながる点を評価して、グリーンボンド賞に選ばれました。SMFGの企画部コーポレートトレジャリー室長の川原英二氏と、室長代理補の青﨑召真氏にお聞きしました。

 

写真は、川原氏㊨と青﨑氏㊧)

 

――個人向けのグリーンボンドは、東京都などが発行はしていますが、国内の金融機関による外貨建て発行は初めてとなりました。どういう経緯で発行されたのですか。

 

 川原氏:われわれは、2015年に国内の民間銀行としては最初に米ドル建てでグリーンボンドを発行して以来、海外機関投資家向けの外貨建てグリーンボンドを複数回発行しておりました。一方で、国内での発行については、グリーンボンドの性質上、日本の個人投資家にもなじむのではと考えていましたが、国内の金融市場は超低金利環境が続いており、弊行の資金需要の観点から、円建てでの発行は難しい、という状況が続いておりました。

 

  国内の個人投資家の反応は、自然災害対策や環境関係については関心が高いという傾向も認識しており、金融機関としてそうしたニーズに応える事は出来ないか、継続的に検討しておりました。いろいろ検討した結果、外貨建てのグリーンボンドならば、弊行の資金需要も有り、かつ、個人投資家に対して一定の金利を提供しつつグリーン投資への橋渡しも可能であると判断し、外貨建てでの個人向け売出債を発行することを決定致しました。われわれとしても、グリーンボンド発行体の一社として、規模の大きな機関投資家だけではなく個人投資家の「グリーン運用ニーズ」にも応える事で、国内のグリーンボンド市場規模が拡大する事は本望であり、昨年の9月くらいから準備を始め、12月に条件決定・発行をしております。

 

川原氏
川原氏

 

 青﨑氏:実際に、わが国の個人投資家の環境意識の高さは、過去にも、外銀や世界銀行等が発行したグリーンボンドでの主要な買い手になってきたことが知られており、日本の個人投資家のESG債への投資ニーズは高いと踏んでいました。

 

――個人向けグリーンボンドは、それまで東京都と、昨年9月には三井造船等が円建てで発行した経緯があります。しかし、金融機関では外貨建ても、円建ても両方とも発行はありませんでした。

 

 川原氏:今回の発行で、金融機関として個人投資家の投資ニーズに応えられる選択肢を提供できたと思います。発行額は当初、円建てで200億円程度を見込んでいたのですが、投資家の反応が思ったよりも強く、最終的には、米ドル建てが2億2780万米ドル(約250億円)、豪ドル建てが8320万豪ドル(約66億円)と、全体で約6割増の合計316億円程度の発行額になりました。正直、われわれの想定以上の手応えで、国内個人投資家のESG債への投資ニーズの強さを改めて確認する事が出来ました。

 

――調達した資金を充当するグリーンアセットはどういったものになるのでしょうか。

 

青﨑氏
青﨑氏

 

 青崎氏:資金使途については、国内外の再生可能エネルギー事業への貸金に充当しています。また、本件は日本国内の投資家に販売するという事もあり、対象となるグリーンアセットの半分以上を日本国内の再エネ事業に充当する予定です。

 

――国内個人投資家向けグリーンボンドの販売単位は機関投資家向けとはどれくらい異なりますか。

 

 青﨑氏:2017年10月に発行した機関投資家向けユーロ建てグリーンボンドの場合、最少売買額は10万ユーロ(約1千2百万円)以上となります。これに対して今回の個人向けでは、一口1000米ドル・1000豪ドル単位(約10万円)と、個人投資家が買い易いよう設定しました。その結果、投資していただいた個人顧客は、三井住友銀行の顧客を中心に、約9000人に上りました。

 

 ――どんな個人投資家が多かったですか。

 

 川原氏:販売はSMBC、及びグループのSMBC日興証券等の店頭にてSMBCグループの顧客中心に販売し、約8割はSMBCの窓口での販売となりました。顧客の方々に良い投資商品を提供できたと思っています。購入されたお客様からは、購入時に資金使途の内容等について説明を求められたるケースもありましたので、しっかりと「グリーン性」を見極めて購入された方が多かったと思います。

 

SMBC5キャプチャ

 

 われわれとしても、資金使途の全額を、国内外のグリーン投資を選別して資金充当することを丁寧に説明しました。購入金額では、1000㌦~1万㌦という層が多かったですね。正確な購入者調査はしていませんが、年配の富裕層のほか、一定程度若い層の方々にもご購入頂けたかと思います。

 

――個人向けグリーンボンドを発行してみて、日本の個人投資家のグリーン投資意欲をどうみていますか。

 

 川原氏:実際に手掛けてみて、個人顧客のグリーン投資商品への購入意欲は非常に高いことを改めて確認できました。同時に、今回外貨建てで発行した事で、グリーンなら何でもいいというのではなく、やはり一定の金利リターンの確保も必要ということも感じられました。

 

 青﨑氏:お客様へのグリーンボンドの中身の説明が大事ですね。その意味では、販売する側もグリーン投資についての知識だけではなく、地球温暖化問題や、エネルギー問題等についての知識等が求められることも実感しました。

 

――今後も個人向けのグリーンボンドを定期的に発行していかれますか。

 

 川原氏:市場環境等を含めて、タイミングをみながら検討することになりますが、今後とも継続的に発行していきたいと考えています。その為には、資金使途となるグリーンアセットをしっかりと確保していくことも重要であると考えています。すでに述べましたように、日本の個人投資家はグリーンボンドへの投資経験を持っておられ、グリーン意識も高いことから、グローバル基準のグリーンボンドフレームワークに基づいた、質の高いグリーンボンドを発行していくことが大事であると考えています。

 

SMBC1キャプチャ

 

――個人向けだけでなく、グリーンボンド全体の戦略はどうですか。

 

 川原氏:2018年は日本企業のグリーンボンド発行が前年より倍増しましたし、投資家のESG投資意欲も高まっていると思います。われわれとしては、質の高いグリーンボンドを定期的に発行することで、日本でのグリーンボンド市場の拡大に貢献したいと考えています。機関投資家向けボンドでは、特に欧州の投資家を中心に、グリーン性の適正評価を重視する動きも強まっています。

 

 青﨑氏:EUの共通グリーンボンド基準化の動きや、国際標準化機構(ISO)でもグリーンボンド規格化の作業が進んでいると聞いています。われわれとしても国際的にそん色のないグリーンボンドを定期的に発行していければと考えています。

 

ーーサステナブルファイナンスの分野にも力を入れておられますね。

 

 末廣孝信氏(企画部サステナビリティ推進室室長):SMBCグループでは、先月18日付けで、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱する「責任銀行原則(PRB:Principles for Responsible Banking)」に賛同することを表明、署名しました。

 

 PRBは、持続可能な社会の実現に向けて、SDGsやパリ協定等の社会的目標と整合した 事業活動を銀行に促すことを目標として策定されています。当社グループは、経営トップの強いコミットメントの下、サステナビリティ経営を加速しており、その方向性とPRBの方向性は合致するものと判断し、国際的な枠組みへの賛同を表明しました。引き続き、グリーン投資やサステナブルファイナンスを積極的に推進していくつもりです。                                                                                                                           (聞き手は 藤井良広)