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三井住友銀行、TCFD勧告に沿ったシナリオ分析を実施。2050年までの洪水等の物理リスク費用、総額300億~400億円と試算。「影響は限定的」。移行リスクの試算は次の課題に(RIEF)

2019-04-25 15:38:55

SMBC13キャプチャ

 

 三井住友銀行(SMBC)は25日、気候変動による財務的な将来影響について、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の勧告に沿ったシナリオ分析を実施、2050年までに想定される洪水等の水災による物理的与信費用は300億~400億円と試算した。単年度ベースでは10億円程度になるため、「影響は限定的」としている。もう一つの移行リスクの試算は今回は公表していないが、今後、シナリオ分析を実施するとしている。

 

 国内の3メガバンクで、TCFD勧告の4つの開示基礎項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った考え方を示したのは、三井住友フィナンシャルグループが初めてになる。ただ、今回の試算は、グループのSMBCに絞ったもので、移行リスクの影響試算とともに、今後、グループ全体の影響分析が求められる。

 

 TCFD勧告の軸となるシナリオ分析については、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が分類するRCP2.6(2℃シナリオ)と、RCP8.5(4℃シナリオ=BAU)の2つのシナリオを選択、2050年までの財務的な影響を試算した。

 

 その結果、物理リスクのうち、気候変動の激化で発生が増大するとみられる洪水の発生確率を踏まえた「水災」発生で融資先企業が影響を受けて生じる与信関係費用を総額300億~400億円程度と推計した。同行は今回の試算について「想定する自然災害や分析対象先等について一定の前提を置いた暫定的なもの」とし、今後、対象範囲を拡大して、より正確なリスク量の把握を目指すとしている。

 

 TCFD勧告がもっとも重視する移行リスクについては、今回、公表していない。移行リスクは気候変動の激化に対応するため、監督当局等の政策方針がより厳しくなることで生じる。金融機関の場合、取引先企業の資産評価等が、従来に比べて、大幅に修正されるリスクを含む。いわゆる「座礁資産リスク」などだ。

 

 SMBC11キャプチャ

 

 SMBCは、「今後、物理リスク同様に移行リスクについても気候変動シナリオ分析を実施し、座礁資産化に伴う影響の分析に務める」と述べている。また座礁資産は取引先企業の企業価値に直接影響することから、「そうした資産を保有する顧客との対話を通して、座礁資産化の懸念を共有し、気候変動への強靭性を高めるよう顧客の取り組みを支援していく」としている。

 

 「リスク管理」面では、大規模プロジェクトへの融資に関しては「エクエーター原則」に基づく環境社会リスク評価を継続するほか、今年度から炭鉱採掘事業への融資についての環境社会リスク評価を拡大するとしている。また石炭火力発電事業への融資についてはSMBCとして昨年6月に「事業別融資方針」を示したが、今年度からグループ全体にも同方針を拡大するとしている。

 

 「指標と目標」では、グループ全体のCO2排出量が2017年度は20万3400㌧で、前年比で1750㌧の削減を実現したとしている。

 

https://www.smfg.co.jp/news/j110201_01.html