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三井住友フィナンシャルグループ、TCFD提言に沿う移行リスクを国内初試算。2℃シナリオの場合、与信関係費用増加は2050年まで毎年20億~100億円。累計600億~3000億円(RIEF)

2020-01-27 18:16:23

SMBC3キャプチャ

  三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は27日、TCFD提言に沿った気候変動リスク管理体制を強化すると同時に、提言に盛り込まれた移行リスクが銀行経営に及ぼす影響の試算結果を公表した。それによると、2℃シナリオでのエネルギー、電力等の炭素関連資産の与信関係費用は2050年までに毎年20億~100億円、累計で600億~3000億円増となる。日本の金融機関で移行リスク試算を公表したのはSMBCが初めて。

 

 SMBCは昨年4月、グループ中核の三井住友銀行が気候変動による物理リスク(水災リスク)についてのシナリオ分析を実施している。今回の移行リスク試算と合わせて、TCFDが気候変動の影響で重視する両リスクを独自試算したことになる。

 

 気候変動のリスク管理の強化については、異常気象に伴う大規模災害の発生や低炭素社会への移行による炭素関連資産の座礁化等の気候変動関連の事象を新たに「トップリスク」に選んだ。SMBCは経営上、特に重大なリスクを「トップリスク」として選定している。同リスクに対しては、ストレステスト等を実施して、シナリオ分析の強化や対応策を経営レベル課題として位置づけることになる。

 

SMBCの移行リスク試算の流れ
SMBCの移行リスク試算の流れ

 

 移行リスク試算では、まず同リスクを、「低炭素社会への移行に伴う気候変動対策や規制、技術革新等によって生じるリスク」と定義づけした。次いで、今後の気温上昇シナリオに応じた財務的影響を定量的に試算した。

 

 試算の対象資産は、気候変動政策や規制の変動によって影響を受けるとみられるエネルギー、電力セクターに特定した。活用したシナリオ分析は、国際エネルギー機関(IEA)による公表政策シナリオ(Stated Polices Scenario)と、2℃シナリオ(Sustainable Development Scenario)を使った。

 

 まず、IEAシナリオで現状の政策通りだった場合の影響度を推計した。2℃シナリオは、2℃目標達成のために政策・規制がIEAシナリオよりも強化される場合のシナリオだ。各シナリオ下で生じる資源価格や発電コスト等の変化が、銀行が保有する資産の信用リスクにどう影響するかを評価して、2050年までに想定される与信関係費用の変化をはじき出した。

 

 その結果が、毎年、20億~100億円程度の幅で、与信関係費用が増加するという内容だ。これらの試算には、今後、開発が期待される温暖化対策の抜本的な技術革新や、各企業が取り組むESG戦略やビジネスモデルの転換や、企業活動の変化に対する政策支援等の要素は加味していない。

 

 SMBCでは「試算結果は、一定の仮定に基づくもので、シナリオ分析のファーストステップ。引き続き精緻化に努めていく。今後は低炭素社会への移行に向けた取引先企業の取り組みへの支援を通じて、気候変動問題への対応でのリーダーシップを発揮していく」とコメントしている。

 

 同グループは昨年4月、物理リスクについても国内金融機関として初めて試算を公表している。国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCP2.6(2℃シナリオ)と、RCP8.5(4℃シナリオ)に基づき、2050年までの国内の水災リスク(豪雨や台風等による浸水等のリスク)による与信費用増加額を300億~400億円と推計している。

 

SMFG2キャプチャ

https://www.smfg.co.jp/news/j110249_01.html