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福島県大熊町、避難指示解除地域でのバイオマス発電事業計画、経産省のFIT制度の適用を受けられず、断念へ(各紙)

2020-04-01 13:00:23

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各紙の報道によると、東京電力福島第一原発事故の被災地である福島県大熊町が、避難指示解除地域で計画を進めてきたバイオマス発電事業が、経産省が担当する再生可能エネルギー推進の固定価格買取制度(FIT)の適用外とされ、事業化の中止に追い込まれたことがわかった。原発もFITも経産省が所管するが、原発事故の影響を受けた被災地の復興に、同じ経産省が水を差す形となっている。

 

 東京新聞が報道した。それによると大熊町は3年前から、東電事故で被害を受けた農地で栽培した作物を発酵させ、発生したメタンガスで電気を作るバイオマス発電の事業化を目指してきた。

 

 町の復興整備計画では、被災市町村の農業の復興及び発展の基本的な方針として、営農再開が困難な農地については、新たな栽培技術の指導等に加えて、ソーラー発電、バイオ発電、植物工場等の誘致等で、農地再生が可能になるまでの間、地域の雇用創出(農 業技術の継承維持)やコミュニティの再建等を進める方針を打ち出している。

 

 バイオマス発電は復興整備計画の柱の一つなのだ。避難指示解除地区では、解除後も風評被害が残るため、農作物を栽培しても市場化が難しい。また農地は栽培を放棄すると荒れ地になってしまう。こうしたことから町では、栽培した農作物をバイオマス発電に転用する計画で、一部の畑でススキなどの燃料用作物を試験栽培も実施してきた。

 

 ところが、経産省は昨年1月、FIT制度の改正の中で、メタンガス利用の発電について、燃料は廃棄物に限る方向を示し、大熊町が進めている農作物を除外する考えを打ち出した。食用農作物を発電に回すケースに歯止めをかけるのが狙いと思われる。

 

 しかし大熊町の場合、栽培した農作物自体が食用として市場化するのが困難な状態が続く。町は経産省に対して、同地での作物由来の燃料化を認めてもらえるよう要請を続けたが、経産省資源エネルギー庁からは「難しい」との回答しかなかったという。このため町では、このまま事業化を進めても赤字から転換できる見通しが立たないとして、事業化を断念する方向という。

 

 経産省は原発行政と再エネ行政の両方を担当する。今回の事例は、原発事故の被災地での復興政策と、再エネ推進策との整合性が同省内部でついていないことを示すものといえる。FIT対象のバイオマス発電に、安易に食用農作物を転用することには一定の制限が求められるだろう。だが、食用農産物の栽培が困難な地区でのFITの扱いについては、「現場」を踏まえて判断すべきではないか。経産省が被災復興が課題である福島の実態を軽視していることを示す一例といえる。

 

https://www.town.okuma.fukushima.jp/site/fukkou/1915.html