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凸版印刷、放射線通さぬ紙 鉛並み、加工も容易 (各紙)

2012-06-07 00:29:04

Toppan's paper keeps the rads out.
 

Toppan's paper keeps the rads out.


凸版印刷は放射線を防ぐ紙を開発した。放射線を通さない性質を持つタングステンを高密度で紙に混入する技術を世界で初めて確立。鉛と同等の遮蔽性能を実現した。鉛と違って加工が容易で人体への害もない。量産体制を確立しており、メーカーへのサンプル出荷を開始した。放射線に汚染されたがれきの遮蔽や除染作業服、放射線医療など幅広い用途を見込む。

紙の製造工程で、粉末のタングステンを均一に混入できるようにした。製造する紙の標準的な形状は、幅が約500ミリメートル、厚さは約0.3ミリメートル。製造した紙に占めるタングステンの比率を、これまでの10~20%から80%にまで高めた。

医療分野で使われるX線を1枚で50%遮断でき、3枚重ねると厚さ0.25ミリメートルの鉛と同等の放射線を防ぐ。放射線医学分野で多くの実績を持つ京都大学大学院医学研究科の平岡真寛教授と門前一准教授の協力を得て、性能を確認した。福島第1原子力発電所の事故で放出された放射性物質からのガンマ線についても、鉛とほぼ同等に防げるという。

一般的な紙とほぼ同様に切ったり折りたたんだりできる。フィルムや壁材などへ貼り合わせることも容易。タングステン紙を樹脂や板に貼り合わせれば耐久性も高められる。人体への害がないことから、人が直接触れる用途にも使える。

加工の容易さを生かして、放射線の除染作業員の全身を覆う防護服や汚染物質を一時的に隔離する遮蔽版などの用途を見込む。医療分野では看護師の作業服や、放射線検査室の壁やカーテンなどに利用する。

価格は500ミリメートル四方で7000~8000円。2015年度に50億円の売り上げを目指す。