大林組、地熱発電を利用した国内初の「グリーン水素」製造の実証プラント、大分で始動。製造した水素は、トヨタ自動車やヤンマー等に供給開始(RIEF)
2021-07-19 14:38:42
大林組は18日、大分県玖珠郡九重町で、地熱発電を利用した水素製造の実証プラントの運転を始めた。地熱発電による水素は「グリーン水素」となり、国内での稼働は今回が初めて。実証プラントでは1時間に10N㎥の水素を製造する。同製造量で燃料電池車30~40台に水素を充填できる。製造した水素はトヨタ自動車等に実際に供給していく。
大林組は2014年以来、水素製造に取り組んできた。これまでに、神戸ポートアイランドで「水素コジェネレーションシステム」実証実験や、ニュージーランドでのメガワット級地熱発電由来のグリーン水素製造・供給施設の稼働等で経験を積み上げてきた。今回の地熱利用のグリーン水素製造の実証作業は2024年3月までの予定で続ける。
地熱発電は、バイナリー発電による設備で、発電量125kW(一般家庭用消費電力約150世帯分)。この電力の半分程度(50~60kW)を活用して水素を製造する。実証プラントは、水素最大製造モードや単価最安モードなど複数の運転モードを選択でき、それぞれのモードでの製造の効率性を実証する。
大分県は地熱資源が豊富。製造した水素はFCVを開発・販売しているトヨタ自動車にFCV用燃料として供給するほか、トヨタ自動車九州が水素ステーションで導入するFCフォークリスト用燃料に、またヤンマーパワーテクノロジーがトヨタのFC電池ユニットを活用して開発する船舶用燃料電池システムへの燃料等に供給を開始した。
政府の「2050年ネットゼロ」宣言後、水素エネルギーへの注目が集まっている。ただ、これまでの電力・エネルギー企業による主な水素製造の取り組みは、天然ガス等の化石燃料を利用して水素を製造し、製造時に発生するCO2を回収・利用・貯留(CCUS)で低減する「ブルー水素」方式が多い。これに対して、再エネを利用する水素製造は「グリーン水素」として「よりクリーンな水素」との期待がかかっている。
大林組は「グリーン水素は製造過程でも炭素を発生させず、再エネへの転換を加速させる相乗効果も見込まれる。再エネよるグリーン水素の製造、輸送、貯蔵および供給のサプライチェーン全体で取り組むことにより、脱炭素社会の実現に貢献していく」とコメントしている。