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三菱ケミカル、炭素集約型の石油化学、炭素両事業の分離を明示。CO2削減コストの上昇等を指摘。基礎化学産業全体の業界再編の主導を政府に求める(RIEF)

2021-12-01 17:57:14

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 三菱ケミカルホールディングスは1日、2025年までの経営方針を発表、石油化学事業と炭素事業を2024年3月期までに分離する方針を明らかにした。ジョンマーク・ギルソン社長は「日本のエネルギーコストは上昇する。石化事業と炭素事業は日本では統合や再編は避けられない」とし、両事業については他社との事業統合等を目指す姿勢を強調した。最重点戦略市場には、エレクトロニクス、ヘルスケア&ライフサイエンス分野をあげた。

 ギルソン氏は今年4月1日付で同社初の外国人社長として就任した。仏素材大手ロケットのCEO等のほか、欧米化学メーカーでの豊富な経営経験を持つ。

 新経営方針発表では、経営戦略での最重要ポイントとして、「市場の成長性、競争力、サステナビリティにフォーカスしたポートフォリオ」を重要尺度として示した。事業の選別基準としては、①市場の魅力度②グループの強み③カーボンニュートラル、の3つを評価基準とした。

 ①は市場の成長性や高収益を阻む要因・リスクの評価等とし、②は事業分野でNo.1かNo.2を狙える地位にあるかどうか、技術革新性、競争優位性・差別化要因等を評価した。③はCO2排出水準、削減余地、顧客/社会に対する付加価値を評価した。

 その結果、石油化学事業と炭素事業が抱える事業課題として、①では国内市場は限定的な成長余地しかないほか、③のカーボンニュートラルでは同社だけでなく、基礎化学産業全体の取り組みが必要で、CO2排出削減による国内エネルギーコスト上昇の可能性を事業リスクとして指摘。これらの解決策は、国内基礎化学産業一丸となった解決策が必要として、業界再編を提唱した。

石油化学事業と炭素事業についての評価
石油化学事業と炭素事業についての評価

 ただ、国家経済安全保障の観点からも、国内基礎化学産業の内製化は必要不可欠とし、政府主導での業界再編の取り組みを求めた。再編・集約化を通じて徹底した事業効率化の追求を課題としている。

 炭素集約型事業を切り離すことで、カーボンニュートラルについては、2030年に現行(2019年)比29%削減とし、2050年目標をネットゼロとした。30年までの対策として、購入電力の排出係数改善、燃料転換、プロセス合理化、事業成長等をあげた。50年までのネットゼロ対策では、購入電力の排出係数ゼロ(再エネ等クリーン電力に限定)のほか、自社発電をLNGから水素・アンモニア転換、バイオマス原料の活用、CCUSや人工光合成などの新技術、オフセット等の対策を列挙した。

   同社の石化事業の売上収益は2021年で4302億円、炭素事業は同1774億円。両事業を合計すると会社全体の売上の19%弱。両事業を外に切り出した後のグループの経営目標では、25年度の売上収益目標は3兆円(21年度見通し3兆8860億円)、コア営業利益は3500億~3700億円(同3000億円)。EBTDA(利払い・税引き・償却前利益)5400億~5600億円、同マージンは18~20%(同13.6%)を目指す。期間中のM&Aなど「戦略的資本枠」として約5000億円を想定した。

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