HOME9.中国&アジア |中国電力と四国電力、ベトナムでの三菱商事主導の石炭火力新設事業に正式参加。G7の「海外石炭輸出停止」合意の「例外規定」を援用。海外年金等は両電力を「投資不適格」に認定(RIEF) |

中国電力と四国電力、ベトナムでの三菱商事主導の石炭火力新設事業に正式参加。G7の「海外石炭輸出停止」合意の「例外規定」を援用。海外年金等は両電力を「投資不適格」に認定(RIEF)

2021-12-28 13:55:11

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 中国電力と四国電力は、ベトナムで三菱商事が推進している「ブンアン2石炭火力発電事業」への出資参画を公表した。海外での石炭火力発電事業については、5月の主要7カ国(G7)気候・環境相会合で原則停止の合意を得たが、日本の要求で例外規定が盛り込まれ、それを援用する形だ。G7合意を「骨抜き」にした事例の第一号になる。中国、四国両電力は売上または発電量の30%以上を石炭火力で占める企業として、ノルウェーの年金基金等から投資不適格企業とみなされている。

 

 (写真は、計画中のブンアン2石炭火力発電所計画に隣接するブンアン1火力発電所)

 

 同発電事業はベトナム中部のハティン省キアン市ブンアン経済特区に建設される。すでに稼働中のブンアン1号に隣接する形で、超々臨界圧発電方式(USC)の石炭火力発電所(発電出力120万kW)を新規に建設、その後25年間にわたってベトナム国営電力公社へ電力を販売した後、同発電所をベトナム政府へ譲渡する契約になっている。

 

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 三菱商事が香港の電力会社CLPと共同で開発推進してきた。だが、CLPが「脱炭素」方針を掲げて撤退。その持ち分(40%)を韓国電力公社(KEPCO)が引き受け、残りを中国電力(20%)、四国電力(15%)、三菱商事(25%)と日本勢主導で保有する「日韓プロジェクト」だ。

 

 中国電力は「海外事業を収益拡大のための成長領域の一つとして位置付けるとともに、国内外の発電所で培ってきた建設管理や運営、環境保全などの技術的知見・経験を活用する機会と捉えて、取り組んでいる。本事業においても、こうしたノウハウを活かすことで、ベトナムの電力の安定供給や低炭素社会の実現へ貢献していく」と説明している。

 

 四国電力は「 当社グループは、海外事業を成長分野の一つと位置づけ、今後も実施地域を拡大し、 海外発電事業を積極的に展開することとしている。その発電方式も、火力のみならず太陽光・風力等の再生可能エネルギー導入を推進していくことにより、対象国における 電力の安定供給や持続可能な社会の実現に貢献していく」としている。

 

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 先進国による海外での石炭火力事業への取り組みは、5月のG7気候・環境相会合で、「排出削減対策をしていない石炭火力発電は直ちに停止し、政府の新規の公的ファイナンスも、ODAを含めて年末までに完全に停止することを約束する」ことで合意した。

 

 この際、英紙等の報道によると、日本の代表として参加した小泉進次郎環境相と梶山弘志経済産業相(ともに当時)は、「もしわれわれがファイナンスを止めれば、中国が海外の石炭火力事業市場に進出するだろう。中国の石炭火力は日本のものより効率が悪い」として反対を続け、最終的にコミュニケに「各国(途上国)の裁量に基づく限られた環境の場合を除いて」との例外規定を盛り込ませたとされる。https://rief-jp.org/ct8/114409?ctid=71

 

 今回の中国、四国両電力の事業参画正式決定は、この「例外規定」を踏まえたものといえ、日本の「石炭火力擁護政策」の「成果」ともいえる。しかしベトナム自身、COP26で「2050年ネットゼロ」を宣言しており、環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)は「これから約4年間かけて建設を進め、25年間もの長期にわたり稼働を予定するようなブンアン2を進めることは、石炭火力からの脱却の妨げとなることに他ならない」と指摘している。

 

 中国電力と四国電力はともに、石炭火力発電が売上または発電量の30%以上を占めるため、ノルウェー年金基金の運用ポートフォリオから、「投資不適格」として除外されている。中国電力は石炭火力の発電容量が2890MWあるとして「脱石炭リスト(Global Coal Exit List: GCEL)」にも掲載され、幅広い投資家から投資引き揚げ(ダイベストメント)の対象にされている。https://www.nbim.no/en/the-fund/responsible-investment/exclusion-of-companies/

 

 今回の2社のブンアン2事業への正式参画表明は、石炭火力発電の縮小や「汚名返上」とは程遠く、むしろ、石炭火力発電量を上積みすることで、「脱石炭」の国際的な流れに抵抗する企業であることを、より鮮明にすることになる。同時に、両社は石炭火力資産の積み上げで、投資先資産の座礁リスクを高めたことにもなる。

https://www.energia.co.jp/press/2021/13605.html

https://www.yonden.co.jp/press/2021/__icsFiles/afieldfile/2021/12/24/pr011.pdf

https://www.kikonet.org/info/press-release/2021-12-27/Chugoku-Shikoku-participate-VA2