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仏トタルエナジーズ、ミャンマーのガス田開発から撤退。軍事政権への「資金源」批判に抗しきれず。同事業参加のシェブロンも撤退方針。投資先のESGリスクが経営判断覆す(RIEF)

2022-01-22 13:30:35

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  仏エネルギー大手のトタルエナジーズ(TotalEnergies)は21日、ミャンマーで開発・操業中の天然ガス事業からの撤退を表明した。同事業はトタルが主要事業者で、国軍の影響下にあるミャンマー石油ガス公社(MOGE)も参加している。このため人権団体等から国軍の資金源になっていると批判されてきた。同事業からは米シェブロンも撤退の方針を明らかにした。投資先のESGリスクが企業の経営判断を左右する事例といえる。

 

 (写真は、トタルが撤退を表明したミャンマーのヤダナ・ガス田)

 

 トタルが撤退を表明したのは同国南西部の沖合にあるヤダナ・ガス田(Yadana)。トタルは1992年以来、同ガス田のM5、M6地区の開発・操業の事業体に出資(31.24%)、主力オペレーターとして活動してきた。他の出資企業はユノカル・シェブロン(28.26%)、タイの国営電力会社PTT子会社の PTTEP (25.5%)、MOGE(15%)となっている。

 

 同ガス田は年間60億㎥の天然ガスを生産し、そのうち70%をタイのPTTに約400kmのパイプラインを通じて供給している。残りの30%はMOGEが国内で使用している。首都ヤンゴンの電力のほぼ半分を供給しているという。輸出されたタイでは西部地区に広範囲に供給されている。

 

 トタルは声明で、2021年2月の軍事クーデータ後、国軍の人権侵害を批判し、新規の開発事業を停止したが、同ガス田の事業は、ミャンマー、タイ両国の市民生活に欠かせないエネルギー源であることから継続してきたと説明。事業を停止すると従業員が国軍から訴追されたり、強制労働に追い込まれるリスクがあることも事業継続の理由としてきた。

 

 また国軍の資金源にならないよう、MOGEへの配当については法的に可能な限りの留保や制限措置をとってきたとしている。しかし、人権侵害が止まないミャンマーで操業を継続することに対して、同社の株主や人権団体等のステークホルダーからの懸念が示され続けている。特にMOGEへの資金供給停止を求める要請が強まっている。

 

 同社によると、MOGEへの出資分相当の配当を停止することは契約上できないうえに、ガス田の主要な収入源であるタイのPTT向け売却収入は、直接PTTから事業会社に支払われており、トタルが制御することは不可能としてきた。ただ、国軍による人権侵害はますます悪化していることもあり、今回、「われわれはもはやミャンマーに前向きな貢献を十分にはできなくなった」として、事業からの撤退を発表した。

 

 トタルのミャンマーでの事業収益は1億500万㌦(約120億円、2021年)。同社はミャンマーからのの撤退について21日付で、他の出資企業等にも通知した。ガス田開発でのトタルの出資分は他の出資者が引き受けるという。引き受け手は現時点では明らかではないが、シェブロンも撤退の方針を示したことから、タイのPTTかMOGEのどちらかとみられる。撤退は最大6カ月後までに効力を発揮する。撤退に伴う金銭的な補償等の支払いは発生しないとしている。

https://totalenergies.com/media/news/press-releases/totalenergies-withdraws-myanmar