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富山湾での洋上風力発電事業、中国の風力発電大手「明陽智能」が受注。中国企業の国内風力市場参入は初。日本企業は全て製造開発事業から撤退。「産業政策の失敗」が招いた中国依存例(RIEF)

2022-02-03 23:18:38

toyamaキャプチャ

 

 各紙の報道によると、ウェンティ・ジャパン(秋田市:VJ)等が、富山県下新川郡入善町で進めている洋上風力発電事業での3000kW級風力発電設備を、中国の風力発電大手の明陽智慧能源集団(明陽智能)が受注することがわかった。中国企業が日本の風力発電事業を受注するのは初めて。日本政府は洋上風力発電の普及を掲げるが、国内の風力発電設備事業者だった三菱重工、日立製作所等は、いずれも事業から撤退しており、国内に製造事業者不在の状態が続いている。

 

 (写真は、富山湾での洋上風力発電事業の完成予想図)

 

 日本経済新聞が報じた。対象となる洋上風力発電事業は「入善町洋上風力発電事業計画」。富山湾の東部に位置する。同計画は当初、入善町沖に 2000kW 級風車を4基設置する計画だったが、その後、3000kW級を3基導入する方向に修正されている。発電した電力は全量「再エネ固定価格買取制度(FIT)」を活用して北陸電力に売電する予定だ。

 

 同事業のEPC(設計・調達・建設)を担当する清水建設が、明陽智能への発注を決めたという。同社は、広東省中山市に本拠を置き、上海証券取引所に上場する。風力発電機の新設シェア(20年)では世界6位で、中国勢としては3位。近く正式に契約する見通しとしている。

 

 報道によると、同社の設備は、性能や価格面での評価が高く、中国政府による風力発電の普及促進策を追い風に成長した。洋上風力に限ると、同社の世界シェアは4位で、中国勢では国有の上海電気風電集団に次ぐ2位の座にある。まだ海外売上高比率は小さいが、品質に厳しいとされる日本で実績を得ることで、アジアなど海外での受注活動に弾みを付ける狙いがあるとみられると指摘している。

 

 清水建設との間では、同社は機械の性能など第三者機関の認証の取得作業も進めているとしている。同社の設備は、グローバル市場で強いシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー(スペイン)やヴェスタス(デンマーク)などの欧米大手企業に比べて安いメリットが評価されたとみられる。また関係者は「中国は日本から距離が近いため、素早い保守サービスを受けられる利点もある」と説明しているという。

 

 洋上風力発電事業では、発電事業者が、設置海域での風力や風向のほか、海流などのデータを集める必要がある。これらのデータには、防衛上の重要データと見なされるものが含まれる可能性があることから、同記事では「受注で合意した富山県沖の風力発電機について、日中双方の企業は安全保障上の懸念にきめ細かく対応する姿勢を示している。風力発電機の設置・運営で取得する風力や海流などの各種データについて『中国には持ち出さない』としている」としている。

 

 しかし、本来は、当初計画通り、日本の風力発電事業者が事業を引き受けておれば、中国製風力発電設備に頼る必要はなかったはずだ。あえて「防衛上の配慮」をする必要もなく、むしろ逆に、アジアで拡大する洋上風力発電市場に、日本の風力発電企業が「技術力」で打って出るチャンスを手にできた可能性もあった。しかし、現実は、かつて風力発電事業を展開していた日本の主要企業は、そろって欧州企業との技術競争に打ち負かされ、彼らとの提携で販売を担う役割に転じている。そこに価格の安い中国企業が参入してきたという図だ。

 

 政府は日本企業の「技術力」をことあるごとにアピールする。だが、実態は、欧米勢にも、中国勢にも、追い抜かれ、市場競争力を喪失している。補助金をバラまくばかりの経産省の「時代遅れの産業政策」の結果でもある。「防衛上の懸念」を表明する前に、日本の技術力と政策力を根本から立て直す必要がある。

http://www.myse.com.cn/

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM288VZ0Y2A120C2000000/?type=my#AAAUAgAAMA