HOME10.電力・エネルギー |グローバルなエネルギー価格高騰長期化の影響で、新電力各社の倒産数14件と過去最高。事業撤退を含め31社が市場から離脱。「逆ザヤ」直面の企業も。自前発電の装備必要度増す(RIEF) |

グローバルなエネルギー価格高騰長期化の影響で、新電力各社の倒産数14件と過去最高。事業撤退を含め31社が市場から離脱。「逆ザヤ」直面の企業も。自前発電の装備必要度増す(RIEF)

2022-03-30 18:58:35

erupioスクリーンショット 2022-03-30 173817

 

 帝国データバンクは30日、2020年末以来、続くエネルギー価格高騰の影響で、2021年度の新電力会社の倒産が14件と過去最多になったと発表した。電力小売事業からの撤退や新規申し込み停止も相次ぎ、この1年で新電力706社のうち、4%に当たる31社が倒産や廃業、事業撤退等を強いられたという。直近では、今月25日、エルピオ(千葉県市川市)とウエスト電力(広島市)が相次いで事業撤退を決めた。帝国データバンクの推計では、新電力各社の販売利益(1MW当たり)は直近でピーク時に比べ、約100分の1に低下、逆ザヤに陥った事業者もあるという。

 

 (上図は、事業撤退を決めたエルピオ社の顧客向けの契約転換の情報=「エネチェンジ」のサイトから)

 

 新電力各社の経営を圧迫しているのは、市場から仕入れる卸売電力価格の高騰に尽きる。日本卸電力取引所(JEPX)の3月のスポット価格(1~30日分)の平均値は1kW時当たり26.3円で、前年同期比4倍超の水準。一昨年来の原油・天然ガス等のエネルギー価格上昇が続く中、2月のロシアによるウクライナ侵攻、3月には福島県沖の地震で火力発電所の一部が止まり需給が逼迫するなど、先行きエネルギー価格が低下する見通しが立たなくなっている。

 

 新電力各社は、自前の発電所を持たず、卸市場から電力を調達するビジネスモデルが大半。契約する販売価格は長期契約のため、仕入れに当たる卸売価格が高騰すれば、事業者によっては逆ザヤになるケースも出る。

 

teikoku001スクリーンショット 2022-03-30 182807

 

 帝国データバンクの推計では、2021年12月時点の新電力の販売価格平均は1MW当たり約1万9000円。前年同月比19%増で、同月の電力調達価格の上昇率(約24%)を下回る。この結果、新電力の販売利益(電力販売価格-電力調達価格)は2021年11月は190円で、直近ピーク時だった2020年5月の約1万4600円の約100分の1に縮んだと推計している。

 

 実際の電力販売価格は、供給する契約電圧によって異なる。全体の傾向として、家庭用の低圧電力より安値に設定されている事業者向けの特高・高圧分野の電力で、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」になる事業者が多いとされる。

 

 こうした市場環境から、今年3月に入って、新規の電力契約を停止する新電力が急増している。各紙にによると、東京電力ベンチャーズ、出光興産、伊藤忠商事らが出資するTRENDE、三菱商事とローソンによるMCリテールエナジー、楽天エナジー等、20社前後が新規受付停止の状態にある。

 

teikoku002スクリーンショット 2022-03-30 184253

 

 事業撤退を決めた「エルピオ」は、千葉県に本拠を置く1965年創業のLPガス会社。電力自由化が始まった2016年から電力小売事業に進出、北海道と沖縄を除く全国で電力販売を展開してきた。2021年11月時点での電力供給量(低圧)は3711万5000kWh。推定12万~14万件の契約を抱えているとされる。同社は電源調達の見通しが立たず、現行の電気料金水準を維持できないと判断して撤退を決めた。LPガス・都市ガスは従来通りのサービスを続ける。

 

 ウエスト電力は、太陽光発電所開発のウエストホールディングスの子会社。こちらもエルピオと同様に、市場価格の高騰を受けての事業撤退だ。新電力が事業停止しても、契約者はすぐに電力供給が打ち切られるわけではない。電気事業法の「最終保障供給」制度というセーフティーネットによって、大手電力の送配電部門である一般送配電事業者から通常料金の2割増で電力供給を得られる。

 

 エルピオの場合は、同じ新電力のサイサンが提供する「エネワンでんき」の代理店となる予定で、顧客は同プランに乗り換えることができるという。ただ、すべての新電力の顧客が新たな契約先にスムーズに移行できる保証はない。北陸電力は3月上旬、法人向けの電力プランで新電力からの契約切り替えの受け付けを停止した。新たな契約をすべて引き受けるには、北陸電力自身が卸市場からの電力調達量を増やす必要があり、その結果、販売価格も上昇し、顧客にもメリットがないと判断したためとしている。

 

 結局、自社の発電源を持たず、卸売市場依存の新電力のビジネスモデルが、内外のエネルギー要因の不安定化とその長期化の影響で機能しなくなっているわけだ。国全体でみれば、エネルギー自給の視点を欠いた海外依存型の政策の欠陥が露呈したともいえる。新電力事業者は蓄電設備を備えた再エネ電源を市場調達と並行して展開するなど、ビジネス基盤の強化が求められている。

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220310.pdf

 

https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/2203/28/news067.html