HOME |シェルが撤退を宣言したロシア・サハリンⅡの権益で、中国企業との売却交渉が判明。成立すると中国企業が同事業の操業権も掌握。日本向けガス輸出は長期契約で影響は少ないが――(各紙) |

シェルが撤退を宣言したロシア・サハリンⅡの権益で、中国企業との売却交渉が判明。成立すると中国企業が同事業の操業権も掌握。日本向けガス輸出は長期契約で影響は少ないが――(各紙)

2022-04-22 23:15:30

Sakhalin2キャプチャ

 

  各紙の報道によると、シェルは、ロシアのウクライナ侵攻後に撤退を表明していたサハリンⅡ事業の権益を、中国のエネルギー企業集団に売却する交渉を行っているという。同事業は日本の三菱商事、三井物産も株主として参加しているが、シェルの持ち株 27.5% が中国勢の手に渡ると、日本の2社の合計保有割合(22.5%)より多くなり、事業の主導権は中国が握ることになる。

 

 ロイター等が報じた。シェルの売却交渉の相手としては、国有大手の中国海洋石油集団(CNOOC)、中国石油天然気集団(CNPC)、中国石油化工集団(シノペックグループ)。3社共同での引き受けとなるか、個別で引き受けるかも協議の対象となっているという。ただ、報道によると、中国企業との協議は初期段階で、合意しない可能性もある。シェルは中国以外の買い手候補とも協議をしているとされる。

 

 サハリンⅡ事業はロシアのガス最大手のガスプロムが50%を保有し、シェルは第二位の株主。天然ガス開発事業の操業もシェルが担当している。中国企業への売却に際しては、操業権も同時に譲渡することになるとみられる。日本の三井物産の持ち株は12.5%、三菱商事10%となっている。

 

 同事業の原油生産能力は日量15万バレル、天然ガスは年間960万㌧。ガスの約6割分は2009年から、三井物産と三菱商事が日本向け輸出している。残りは韓国のエネルギー企業の長期契約と、中国企業がスポット(随時契約)で購入している。中国企業がガスプロムに次ぐ第二位の株主になった場合、こうした権益についても将来的に見直しの対象になる可能性もあるようだ。

 

 現在、日本に輸入された天然ガスは、JERAや東京ガスなど日本の電力、ガス会社8社が長期契約を結んで火力発電の燃料として活用している。気候変動対策としては、天然ガスも2040年代にはCCS等の回収設備を伴わない火力発電事業の燃料には使えなくなる可能性もあることから、日本のエネルギー官民も、ロシア・中国との政治バランス、化石燃料・再エネ・クリーンエネ等のエネルギーバランスを見据えた長期戦略を練り直すタイミングかもしれない。

 

 シェルはロシアのウクライナ侵攻直後の2月28日に、サハリンⅡからの撤退を表明した。ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン事業のノルドストリーム2事業、ロシア国内でのサリム石油開発事業とギダン・エネルギーベンチャー事業(各50%)等からの撤退を表明、ロシア国内での原油、石油精製、ガス、LNG等の開発・販売事業をすべて段階的に引き揚げると宣言している。https://rief-jp.org/ct10/122915?ctid=72

 

 ロシア原油のスポットでの購入停止、ロシアでの消費者向けのサービスステーションや航空機燃料、潤滑油等の取引も停止する。同社は今月初め、これらのロシア事業撤退の影響で、減損処理額が約50億㌦に達すると説明している。

 

 シェルのほかにも、米エクソン・モービルは、同じサハリンでのサハリンⅠ事業からの撤退を表明している。BPも、同社が保有するロシアの石油大手ロスネフチの全株式(19.75%)をすべて売却する方針を打ち出している。エクソンのサハリンⅠ事業の権益の動向はまだ明確ではないが、BPは中国のCNPC、シノペックグループのほか、中東の国営企業等との交渉を続けていると報道されている。

 

https://www.infobae.com/en/2022/04/21/chinese-giants-could-buy-shell-part-of-russian-project/