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ガス器具大手リンナイ、水素専焼の家庭用給湯器の開発に成功。燃焼バーナーを独自開発。「逆火」現象を防止。海外で実証実験を行い、2030年にも実用化目指す(RIEF)

2022-05-31 11:41:44

Rinnai002キャプチャ

 

 ガス器具大手のリンナイ(名古屋市)は30日、燃焼時にCO2を排出しない家庭用給湯器の開発に成功したと発表した。同社によると、水素専焼の家庭用給湯器の実用化は世界初という。水素は燃やしてもCO2排出を出さないクリーン燃料だが、引火し易い課題がある。同社はこの課題克服のため、技術的改革を進めて問題をクリアしたとしている。同社では開発した技術を2~3年かけて実証実験を進め、2030年ごろに英国、オーストラリア等の水素先進国での販売を目指すとしている。

 

 リンナイは2021年11月にカーボンニュートラルの取り組みである「RIM 2050(Rinnai Innovation Manifesto 2050)」を発表。化石燃料を主とする家庭用機器からのCO2排出削減からゼロ化を目指している。家庭用給湯器や、ふろ給湯器等の商品使用時に排出されるCO2は95%と圧倒的に多い。同社では高効率給湯器などの省エネ商品の開発を進めているが、さらにCO2排出量を削減・ゼロ化する手段として水素燃焼の給湯器の開発を進めてきた。

 

 水素を燃焼させる場合の最大の課題は、「逆火(ぎゃっか)」現象への対応。水素は天然ガスよりも8倍も燃焼スピードが早く、バーナーで燃焼させる場合、バーナーの外に水素ガスが噴出するよりも先に、バーナー内部で燃える現象が起き易い。逆火現象が生じると、燃料の水素に引火して爆発するリスクも高まる。

 Linnai001キャプチャ

 そこで同社では、逆火を起こさないようにするために、まず独自の専用バーナーを開発した。細かな金属の繊維を焼き固めてバーナーを製造することで、加工部の大きさを現状のものよりも100分の1以下にまで小さくして、逆火を起こしにくい形状とした。次いで、万一、逆火が起きても燃料の水素に引火しないように、バーナーの直下に、炎を遮断できる構造を組み込んで安全性を向上させたという。

 こうした改良によって、現行の天然ガスを使う給湯器と変わらない安全性を確保できるとしている。同社では今回開発した技術を今秋からオーストラリアで実証実験を実施する。同国は水素導入に熱心で、現地のガス会社が建設した家屋にリンナイが開発した給湯器を設置、長期間使用時の耐久性等を検証する。実証実験には2~3年かける予定。その後、商品化のメドが立てば、水素利用が進む同国のほか英国等での販売を目指す予定だ。

 日本国内での販売については、現状では水素インフラが整っていないことから時期は未定としている。しかし、現在、日本を含めた世界での家庭用給湯器はガスや電気が主流で、水素燃焼給湯器に切り替えることで家庭起原のCO2排出量を削減し、カーボンニュートラル実現を促進できる期待がある。政府等の水素インフラ整備が普及の課題といえる。

https://www.rinnai.co.jp/releases/2022/0530/