HOME |EU首脳会議、ロシア産石油の禁輸合意。ロシアからの石油輸入を年内に約90%削減。パイプライン経由はハンガリーの反対で除外。EU首脳は「一時的措置」とし、再調整を強調(RIEF) |

EU首脳会議、ロシア産石油の禁輸合意。ロシアからの石油輸入を年内に約90%削減。パイプライン経由はハンガリーの反対で除外。EU首脳は「一時的措置」とし、再調整を強調(RIEF)

2022-05-31 14:03:18

Council002スクリーンショット 2022-05-31 130743

 

  EUは30日、ベルギー・ブリュッセルで首脳会議を開き、ロシア産石油の大半の輸入を禁止することで合意した。しかし、ハンガリーの反対によって、パイプライン経由の輸入については禁輸対象から除外するとした。EUが当初、想定した全面禁輸措置に対して、自国経済への影響を懸念するハンガリーが抵抗を続け、今回の「妥協策」で落ち着いた。

 

 (写真は、欧州理事会議長のミシェル氏㊧と、欧州委員会委員長のフォンデアライエン氏㊨)

 

 欧州理事会議長のシャルル・ミシェル氏は「(今回の合意で)ロシア産石油の3分の2以上が直ちに(禁輸)対象となる。ロシアの莫大な戦費調達源を断つことができる」と、合意の意義を強調した。「ロシアに戦争を終わらせるよう最大限の圧力をかけることになる」と述べた。パイプライン経由の輸入原油については「一時的な例外措置だ」と説明、今後の調整によって禁輸対象に加える可能性を示唆した。

 さらに欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、「禁輸の範囲は将来、より広く拡大するだろう。すでにドイツとポーランドは今年末までにロシアからのパイプラインでの石油輸入を自発的に削減することを明らかにしている。そうすれば年末までに「ロシア産石油の約90%を削減できる」と指摘した。

 ロシアからハンガリー等に石油を供給している「Drushba」パイプラインの輸送分は、EUがロシアから輸入する石油全体の10~11%。これらはハンガリ―から、スロバキア、チェコに供給されている。ハンガリーは石油の約65%をロシアからの輸入に頼っており、スロバキア、チェコの両国も、ロシア産石油の全面禁輸に対応するには、時間が必要と主張したという。

「パイプライン輸送石油」の除外主張を貫いたハンガリーのビクトル首相
「パイプライン輸送石油」の除外主張を貫いたハンガリーのビクトル首相

 ハンガリーの首相、オルバン・ビクトル氏は、「エネルギーは重要課題だ。われわれはまずそのソリューションが必要。その後にサンクション(対ロシア制裁)だ」との主張を崩さず、パイプライン輸送石油の例外措置を確保した。同氏は、欧州委員会が禁輸に伴うEU加盟国との交渉を十分にできていないと不満を表明した。

 首脳会議にはウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキー氏も電話で参加。「EU諸国は内部での論争を早急に止めるべきだ。内部論争の継続は、ロシアにEUにもっとエネルギー圧力をかければいいと思わせるだけだ。EUは分裂せず、団結する時だ」と求めた。

 ラトビア首相のクリシュヤーニス・カリンシュ氏は「EU諸国はそれぞれの国の個別利害で身動きが取れなくなる議論をするべきではない。確かに(禁輸によって)コストがかかる。しかし、それらはマネーによる支払いの問題だ。ウクライナの人々は、自らの命で(ロシアに対して)支払っているのだ」と指摘した。

 首脳会議では、ロシア最大の銀行であるズベルバンクの国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網からの排除措置や、ロシアの3大国営放送局への制裁、戦争犯罪に問われている個人のブラックリスト掲載等の措置についても承認した。首脳会議は31日も開く。

https://www.consilium.europa.eu/en/meetings/european-council/2022/05/30-31/

https://www.consilium.europa.eu/media/56405/special-euco-may-background-brief-final.pdf