HOME10.電力・エネルギー |東京湾岸での大規模LNG火力発電所事業建設構想から、九州電力が撤退を表明。エネルギー市場混乱の中で投資見通しつかず。共同事業者の東京ガスは検討継続の声明(RIEF) |

東京湾岸での大規模LNG火力発電所事業建設構想から、九州電力が撤退を表明。エネルギー市場混乱の中で投資見通しつかず。共同事業者の東京ガスは検討継続の声明(RIEF)

2022-06-15 14:58:50

sodegaura002スクリーンショット 2022-06-15 145204

 

 九州電力は15日、東京ガスと東京湾岸の千葉県で進めてきた天然ガス(LNG)火力発電所の建設計画から撤退すると発表した。同事業は2028年にも出力195万kWの発電所を建てる構想。九電では、「エネルギー市場が世界規模で混乱する中で、燃料、電力市場の情勢を総合的に判断した結果、同事業への経営資源の投入を取りやめる」と説明している。共同で推進してきた東ガスは、事業の検討を継続すると発表した。

 

 九電と東ガスが進めてきたLNG火力発電所は、千葉県袖ケ浦市に建設を予定している。ガスタービンコンバインドサイクル方式の発電で、最大200万kWの発電規模になると想定。燃料をLNGとすることで、電力会社が主導の石炭火力発電所よりCO2排出量が少ないため、脱炭素化が進む中でも、比較的長期にわたっての操業が見込めるとしてきた。

 

 しかし、ロシアのウクライナ侵攻で天然ガス価格も高騰し、さらにエネルギー市場全体の見通しがつかねない状況が続いている。また天然ガス自体も化石燃料として早期利用縮小を求める動きが世界的に強まっていることも、新規LNG火力の先行き不透明感を高めている。

 

sodegaura001スクリーンショット 2022-06-15 144422

 

 こうした先行き見通しから、九電は投資負担を回収できないと判断したとみられる。一方で、東ガスは「九州電力が本検討からの撤退を決定したが、当社としては、今後の検討を継続 していく」と単独で事業を推進する方針を発表した。同社は検討継続の理由として「再エネの導入に欠かせない調整力として期待される LNG 火力発電へ の投資を通じて、電力の安定供給に貢献し、責任あるトランジションを実現するべく、同地点での LNG 火力の開発検討を引き続き進めていく」としている。

 

 九電も東ガスも、同事業を首都圏での電力小売り事業の主力電源と位置付けていた。九電が「投資に見合わない」と判断して撤退を決めたことに対して、東ガスが検討継続を打ち出している背景には、東ガスは、ガスと電力のセット販売で首都圏の顧客を増やしているという販売戦略の違いもあるようだ。

 

 ただ、市場環境の不透明感が続く中で、東ガス単独で当初計画通りの大規模LNG火力を開発できるかどうかは不透明だ。燃料をLNGだけでなく、CO2排出量の少ない水素、アンモニア等の混焼に切り替えるか、あるいは発電所の規模を縮小するか等の選択肢も出てきそうだ。

https://www.kyuden.co.jp/press_h220615-1.html

https://www.tokyo-gas.co.jp/news/press/20220615-01.pdf