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九州大学、双日、九州電力の3者。大気中CO2を直接回収したうえで炭素燃料化する「DAC-U」装置開発へ。従来のDACより大幅に小型化可能な「分離膜型」の実証で低コスト化目指す(RIEF)

2023-03-25 17:08:59

kyuudaiキャプチャ

 

 九州大学、双日、九州電力の3社は22日、九州大学が開発中の、大気中のCO2を直接回収(DAC  : Direct Air Capture)する技術を高度化した「分離膜型CO₂回収(membrane-based DAC, : m-DACTM)」装置の開発によって、回収したCO2を直接、燃料等に変換して資源化・利用する「DAC-U」装置を共同開発する覚書を結んだと発表した。従来のDAC技術の課題である装置の巨大化・高コスト化を克服し、どこでもDACが可能になるとともに、回収したCO2を燃料とした炭素燃料製造事業を目指す。

 

 九州大が開発した「m-DACTM」技術は、従来のCO2分離膜と比べて高い透過性を持つのが特徴だ。このため、同技術を用いると従来技術の数10分の1以下の面積でかつ、低エネルギーで大気中からCO2を回収できる可能性があるとしている。開発した分離膜は、他のDAC事業が取り入れているCO2吸収液などの薬剤は使わず、分離膜をモジュール化することで、必要に応じてCO2回収量を任意に調整できる。巨大なDAC装置を備えずととも、地理的な状況に適合する設備を構築できる仕組みだ。

 

 こうした利点から、関係者らは、様々な場所でCO2を回収できる「ユビキタスCO2回収」が可能とみている。さらに大気中からCO2を回収するだけでなく、回収したCO2を利用して炭素燃料を製造する工程を連続・一貫して実施する「DAC-U」装置に発展させることで、DACのコスト低下を促進できるとみている。発電所・工場等から排出されるCO2を回収・貯留するCCS技術に、利用を加えてCCUS化することで、コストダウンとサーキュラー化につなげるのと、同様の発想だ。

 

 すでに九大と双日は、2022年2月に、m-DACTM技術とそれに関連した最先端のCO2活用基盤技術の実用化・事業化を推進するための覚書を結んでいる。九大はDAC-U装置の技術情報、知見の提供などを行い、双日は傘下の双日イノベーション・テクノロジー研究所でビジネスモデル仮説の検証等を担当。DAC-U装置の基礎研究開発と社会実装に向けた検討を中心に進めてきた。

 

 今回の九州電力をパートナー企業に加えた取り組みでは、DAC-Uの基礎的研究・検討から、DAC-Uの実装に力点を置く。具体的には、九電が手掛ける都市開発などで開発する住宅やビル事業で、DAC-U装置の活用実証を行う。大気中から吸収したCO2を地域で必要なエネルギー開発の燃料として利用することで、当該地域をカーボンニュートラルから、カーボンネガティブにレベルアップすることを目指す。九電はDAC-U装置の利用者側の立場での用途仮説の検証、実証候補地の検討などを担当する予定という。

 

 DAC-U装置の軸になる九大開発の「m-DACTM」は、同大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所とネガティブエミッションテクノロジー研究センターが、内閣府ムーンショット型研究開発事業として研究開発を進めている。

 

https://www.sojitz.com/jp/news/2023/03/20230322-01.php