米欧の多国籍自動車メーカー「ステランティス」、「e燃料」使用テストを表明。2014年以降の28種類のエンジン車別を対象。既存車の排出削減と、将来のエンジン車維持も視野か（RIEF）
2023-04-22 01:46:02
プジョーやクライスラー等を販売する多国籍自動車会社のステランティス（Stellantis）は、EUが2035年以降もガソリン車等のエンジン車での使用を認める合成燃料の「e fuel（e燃料）」の使用テストを実施していることを発表した。対象とする車種は2014年製造車種を含め28種類のエンジン種別に対応する車種としている。Stellantisは2030年までにすべての新車販売を電気自車（EV）とする方針を決定しているが、テストによって既存車で「e燃料」の使用が可能となれば、CO2削減効果がさらに高まるとしている。
（写真は、マクロン仏大統領㊥に説明するステランティスCEOのタバレス氏＝パリ自動車ショーで）
EUは2035年以降の新車販売についてEV等の電動車に限定する法改正で合意した。だが、土壇場の政治交渉、でドイツが「e燃料」の活用によってCO2排出量を90％まで削減できるエンジン車の存続も認めるよう提案、結果的に了承された。https://rief-jp.org/ct5/133871?ctid=72
ステランティスは、2021年にイタリアと米クライスラーで構成するフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA）が、フランスのPSAと合併して設立された多国籍自動車メーカー。フィアット、オペル、プジョー、ジープ、クライスラー等のブランド車をグローバルに販売している。本拠はオランダ・アムステルダムに置く。
同社はEUの排ガス規制「Euro 6基準」の適合車である2014年から29年までの車種を対象とする。同社が販売したこれらの車は2800万台にのぼり、「e燃料」使用で想定通りのCO2削減効果が確認されると、2025年～2050年の間に、4億㌧のCO2排出削減に貢献する可能性があるとしている。これにより、新車だけでなく、既存車両からのCO2排出量削減も大きく進むと強調している。
同社自体はすでに2030年以降のEUでの新車販売は100%EVとし、米国市場では10年後に、乗用車と軽SUVの新車の半分化する方針を決めている。そのために2025年までに300億ユーロ以上の設備投資をするとしている。一方で「e燃料」の生産にはグリーン電力を活用することから、CO2の排出量は大幅に削減され、将来、大気中のCO2を直接回収するDAC技術の活用がコスト的にも可能になると、100%削減も可能という。
CEOのカルロス・タバレス（Carlos Tavares）氏は「われわれは『e燃料』を、わが社の全体的な脱炭素アプローチを補完するソリューションとしてテストすることで、地球温暖化に対する取組努力を倍増させる。現行の電力化戦略を積極的に実行することを最優先に取り組むがが、同時に、現在走行している13億台の販売済みのエンジン車からのCO2排出量を削減するスマートな代替案を見出さねばならない」と強調している。
同社では「Dare Forward 2030」戦略計画として、2030年までに製造から販売に至るまでのCO2排出量を半減させ、2038年にはネットゼロを実現する目標を掲げている。自動車会社のScope3にはバリューチェーンの下流部門（営業等）が含まれる。既存販売車からのCO2削減が「e燃料」使用で高まると、同社のScope3削減に大きく貢献することにもなる。
また2035年以降、EV車と「e燃料」使用車のライフサイクルベースのコスト評価が大きく変わるようだと、「e燃料」で走るエンジン車のブランドを新たに追加する選択肢もあり得る。EU市場以外では、米国を含め、エンジン車は35年以降も相当の市場シェアを続けるとみられ、自動車の脱炭素化はEV化だけの「単線」ではない可能性は当分、続くようだ。https://rief-jp.org/ct10/133908
Research Institute for Environmental Finance