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出光興産、EUの「e燃料」での内燃機関自動車の2035年以降の新車販売承認の方針を受けて、一躍脚光を浴びる「e燃料」を北海道で製造へ。風力発電のグリーン電力を活用(各紙)

2023-03-27 13:59:23

idemitsuキャプチャ
 各紙の報道によると、出光興産は、北海道・苫小牧の北海道製油所で、再生可能エネルギーからのグリーン電力と、工場等から排出されるCO2を活用した「e燃料(e fuel)」の製造に乗り出す。「e燃料」は合成燃料とも呼ばれる。EUが2035年以降もネットゼロ燃料として、内燃機関車での利用を認める方向にあることから、脚光を浴びている。ガソリンの代替燃料として自動車用に使えるだけでなく、航空機燃料や暖房用にも使える。

 (写真は、出光興産の北海道製油所)
 北海道新聞等が伝えた。出光興産では、製造する「e燃料」の原料として、風力発電による再エネ電力で水を電解して製造する「グリーン水素」と、自社の製油所や市内工場などから排出されるCO2から合成するとしている。2030年までの製品化を目指す。
 「e燃料」は、炭化水素化合物の集合体で「人工的な原油」とも呼ばれる。原油に比べ硫黄分や重金属分が少なく、エネルギー密度がガソリンや軽油などと同程度なのが特徴とされる。常温常圧の液体で、水素などの新燃料に比べ、長期備蓄できる点も実用性が高いとされる。

グリーン水素の電源となる再エネは、風力発電で確保する予定。昨年12月には、北海道製油所の敷地内に風況観測塔を設置し、風力発電利用のための風速や風向のデータの収集を始めた。
 欧州で進められている「e燃料」生産では、原料となるCO2を大気中から直接回収するDAC技術を使うことで、CO2排出ではなく、「CO2ネガティブ(吸収)」とし、グリーン水素のカーボンニュートラルと合わせて、カーボンニュートラル化することを目指す。だが、出光の場合、DACの採用は現時点では想定していないようで、工場等でのCO2排出を前提とすることで、EUがEV車とカーボンニュートラルで同等とみなす「e燃料」の水準にはとどかないことになる。
 ただ、出光では、北海道電力や石油資源開発等と共同で、周辺の工場等から排出されるCO2を回収し地下に貯留するCCSの共同事業化を進めている。「e燃料」の原料とするCO2をCCSと連動させると、カーボンニュートラルとみなされることになる。
 また出光では製造した「e燃料」を、従来の石油と同じようにガソリンスタンドなどへの供給を目指すとしている。同製油所では年間約800万k㍑の原油処理をしており、その一部を「e燃料」で置き換えることも予定しているという。新千歳空港や大規模工業地帯などに近い立地を生かして、2030年までに「e燃料」の製造や流通の供給網を構築したい考えとしている。
 今後の課題は、製造コストの引き下げにかかっている。現在、「e燃料」の製造コストは1㍑当たり300~700円程度とされ、市販ガソリンの2~4.5倍。これにDACやCCSでCO2低下を進めるコストを加えると、さらにコストアップする。出光は2030年にかけて、再エネ価格の低下等が進むことで、将来的には200円程度にまで下がると見込んでいる。