ENEOS。南米の合成燃料開発事業の「HIF Global」と覚書。再エネ利用によるグリーン「e燃料」を調達し、内燃機関自動車や航空機のエンジン燃料等にそのまま充当へ（RIEF）
2023-10-04 23:45:17
（写真は、HIF社がチリ・Haru Oniで展開する再エネ電力使用の「e燃料」実証プラントの全容）
ENEOSは4日、合成燃料（e燃料）の世界的製造事業者のHIF Globalとの間で、同社の「e燃料」を調達する覚書に調印したと発表した。HIFはチリとペルーの企業AMEが設立、ドイツのポルシェAGの支援で「e燃料」開発をグローバル展開することを目指している。同社が開発する「e燃料」は再エネ電力から製造するグリーン水素とカーボンリサイクルされたCO2を原料とする「グリーンe燃料」で、既存の内燃機関自動車や航空機のエンジン燃料としてそのまま利用できる。
「e燃料」については、EUが2035年からガソリン車・ディーゼル車等の内燃機関自動車の新車販売禁止の例外措置として、「e燃料」を使う場合は例外的に認める方針を決めている。このため、各自動車メーカーや燃料企業等が「e燃料」の開発に力を入れている。
「e燃料」は合成燃料として、すでに市場に流通している。だが、その多くは化石燃料を原料とした「グレー燃料」だ。欧州委員会は対象として認める「e燃料」について「100%カーボンニュートラル」を条件とする方針で、再エネ電力による水の電気分解を利用したグリーン水素の利用が必須になるとみられる。
HIFはそうした「グリーンe燃料」開発を目指している。同社はすでに、チリのマガジャネス州にあるHaru Oniの実証試験設備で同燃料の製造を進めている。同プラントは、3.4MWの発電能力を持つ風力発電の電力を使い、1.2MWの電解設備で年間130kLの「e燃料」を製造できる。すでに2022年12月に世界初の「グリーンe燃料」を製造している。同プロジェクトにはポルシェのほか米Exxon Mobile、独シーメンスエネルギー、イタリアEnel等も参画している。
Haru Oni プラントで製造する「e燃料」は、カーボンニュートラルガソリン（eガソリン）、カーボンニュートラル天然液化ガス（eLG）等の生産も目指しているという。同プラントの経験を踏まえて、2024年には商業規模プラントでは初となる製造拠点を米テキサス州マタゴルダ郡で着工する予定としている。
HIF GlobalのCEOのセサル・ノートン（Cesar Norton）氏は「わが社のプロジェクト・ポートフォリオは拡大を続けている。HIFの南米、米国、豪州にある全拠点が膨大なe燃料への需要を満たすことに寄与するものと確信している」と述べている。ENEOSとの覚書では、グリーンe燃料をENEOSに供給することに加え、日本でのCO2サプライチェーンの確立や、HIFが製造した合成メタノールを合成ガソリンやジェット燃料に変換するための製造拠点を日本に建設する可能性の検討も行うとしている。
ENEOS常務執行役員の須永耕太郎氏は「当社は、水素や再エネの活用を推進し、e燃料などのカーボンニュートラル燃料の事業開発を進めることで、GHG排出量を削減するためのさまざまな取り組みを行ってきた。今回のHIFとの協業は、エネルギートランジションを主導する基盤となり、カーボンニュートラル社会における日本でのエネルギー供給の継続につながるものと考える」と強調している。
e燃料はCO2を排出しない点で、電気自動車と対抗でき、さらに既存のエンジン車で利用可能な点もメリットだ。その一方で、再エネ電力だけで走行できるEVに比べて、同電力で水を電気分解し、CO2と合成するという追加工程を経る必要があり、現状の工程のままではコストアップになる。こうした点をどう克服するかが、EVに対応するうえでのポイントとなる。
https://www.eneos.co.jp/newsrelease/20231004_01_01_1040009.pdf
https://hifglobal.com/wp-content/uploads/2023/10/2023.10.04-HIF-Global-and-ENEOS-eFuels-MOU.pdf
Research Institute for Environmental Finance