Green Carbon社。ベトナム北部のハイズオン省で、最大5万5000haの水田を対象とした「稲作クレジット」事業を展開へ。「間断灌漑(AWD)方式」で。現地省当局と覚書締結(RIEF)
2024-09-11 15:57:44

水田から発生する温室効果ガス(GHG)のメタンガスを削減することでカーボンクレジットを生み出す「稲作クレジット」事業を展開する「Green Carbon」(東京)は、ベトナムで新たな事業拡大に乗り出す。ベトナム北部のハイズオン(Hai Duong)省の農業農村開発局(DARD)との間で、同地の水田最大5万5000haを対象に「稲作クレジット」事業を進める覚書(MOU)を結んだ。同社はすでにベトナムの他の4省で同事業を進めており、今回が5省目。メタンガス削減の手法は、日本で広く行われている「中干し」ではなく、間断灌漑(AWD)方式で展開する。
ハンズオン省と締結したMOUでは、今後10年間にわたって、同省の水田でのメタンガス排出削減プロジェクトを展開し、対象水田の規模は最大5万5000haまで広げることが可能としている。事業化には、同社がすでに連携しているベトナム国立農業大学(VNUA)と協働することで、創出するクレジットの信頼性を高める。
AWD方式によるメタンガスの削減は、日本で一般的に採用されている「中干し」方式と似ている。同方式ではいったん水田の水を抜いて数日間乾かす。一方、AWDの場合も、水田の水を抜いて乾かすが、灌漑の目的もあることから、水田の推移を目安として、数日おきに入水と自然乾燥を繰り返す。これによって水田中の泥層から発生するメタンガスを削減し、その削減量をカーボンクレジットとして認証を得る。測定と認証のプロセスが信頼性のカギになる。
「稲作クレジット」はいずれの方式でも、水田を乾燥させる日時等の計測データを把握することで、削減量を定量的に計算できることから、自然由来系の自主的カーボンクレジット(VCM)としては信頼性が高いとされる。ベトナムでは水田耕作地が多く、農家にとってはお米の収穫収入に加えてクレジット収入を得ることが出来ることから、農家が導入に積極的だという。Green Carbon自体もすでにNam Dinh、Nghe An、Vinh Phuc、An Giangの4省と事業を先行させている。
創出されたクレジットは、グローバルにクレジット確保を求める欧米の企業等が買い手候補になる。日本政府が推進するGX政策では、国内で実施する稲作クレジットの場合は、J-クレジットとして認められるが、海外で同様の手法で開発したクレジットは現在のところ削減クレジットとして売買の対象外となっている。
Green Carbon社は、東南アジアを中心に自然由来のカーボンクレジット創出に取り組んでおり、稲作クレジットのほか、森林保全、マングローブ植林、牛のゲップ削減、バイオ炭プロジェクトなど自然由来のカーボンクレジット創出を幅広く展開している。環境金融研究機構(RIEF)が毎年実施するサステナブルファイナンス大賞で、2023年の大賞を受賞している。