米スリーマイル島原発1号機を、マイクロソフトのAI使用のデータセンター向け専用発電所として再稼働へ。1979年に炉心溶融事故を起こした2号機に隣接する原発で、現在廃炉作業中(RIEF)
2024-09-21 23:57:50
(写真は、2019年の閉鎖前のスリーマイル島原発1号機(手前の2基のクーリングタワー、後方のタワー2基は事故原発の2号機用=Wikepediaより)
1979年に炉心溶融(メルトダウン)事故を起こし、廃炉となった米国ペンシルバニア州のスリーマイル島(TMI)原発2号機に隣接する同1号機について、米大手電力コンステレーション・エナジー(Constellation Energy)社は同原発を再稼働させ、米IT大手のマイクロソフトが人工知能(AI)を使うデーターセンターの専用電力の発電所とすると発表した。TMI-1は、事故は起こさなかったが、米国内でのシェール革命で、ガス火力が普及し、原発発電のコストが高くなったことから2019年に廃炉扱いとなっていた。
コンステレーション社は、マイクロソフト社との間で20年間の電力購入契約を締結した。事故を起こしたTM-2は所有企業のエナジー・ソリューションズ(Energy Solutions)社によって廃炉作業が進められている。2019年に廃炉が決まったTM-1もコンステレーション社が12億㌦を投じ、2079年までに廃炉にする予定としていた。だが、今回のマイクロソフトとの契約で、同社は約16億㌦(約2300億円)を投じて、タービン、発電機、主変圧器、冷却および制御システムを含むプラントの修復を進めるとしている。
原子炉の再稼働には、米国原子力規制委員会(NRC)による包括的な安全性および環境レビューに基づいた承認に加え、同原発が立地するペンシルバニア州および地方機関からの許可も必要になる。TM-1は停止するまで、運転期間の許認可を34年まで得ていたが、コンステレーション社は、再稼働に際して、別途、NRCに申請して、少なくとも2054年まで発電所の操業延長を求める方針としている。整備が順調に進めば、2028年に稼働できるという。
再稼働に伴い、TM-1の名称についても、2号機の事故イメージが強い「スリーマイル島」から、データセンターのエネルギー供給発電を強調する「クレーン・クリーン・エネルギー・センター:Crane-Clean-Energy-Center:CCEC)」に変更する。冒頭の「クレーン」は、同社の元CEOのクリス・クレイン(Chris Crane)の名に由来する。
コンステレーション社の社長兼CEOのジョー・ドミンゲス(Joe Dominguez)氏は「データセンターをはじめ、わが国のグローバルな経済および技術競争力にとって重要な産業を支えるには、毎日24時間、無炭素で信頼性の高い大量のエネルギーが必要。その約束を常に果たせる唯一のエネルギー源は原発だ。TM-1は閉鎖する前は、送電網の中でも最も安全で信頼性の高い原発の一つだった」と強調している。同型のTM-2が炉心溶融を引き起こしたことについては言及していない。
マイクロソフトのエネルギー担当社長のボビー・ホリス(Bobby Hollis)氏は「今回の合意は、カーボンネガティブになるという当社のコミットメントを支援し、送電網の脱炭素化を目指すマイクロソフトの取り組みにおける大きなマイルストーンとなる。マイクロソフトは、エネルギー供給業者と協力し、送電網の容量と信頼性のニーズを満たすために、カーボンフリーのエネルギー源の開発をさらに続けていく」と述べている。
TM-2のスリーマイル島原発2号機は1979年に、炉心溶融(メルトダウン)が発生する事故を起こした。事故は、蒸気発生器に冷却水を送り込む主給水ポンプが停止したことと、機器の故障や作業員の誤操作等が重なり、原子炉内の冷却水が減少、炉心の上部が蒸気中に露出し、燃料の損傷や一部の構造物の溶融を引き起こした。国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル5の事故と評価された。
TM-1は事故は起こさなかったが、TM-2の事故の影響で、NRCは、原子力発電所の周囲に2つの緊急時計画区域が定めている。1つは半径10マイル(16km)のプルーム被ばく経路区域で、主に大気中の放射性物質の被爆や吸入による人体への健康影響を考慮した区域。もう1つは半径約50マイル(80km)の摂取経路区域で、主に放射性物質に汚染された食品や飲料水の摂取を考慮した区域。TM-1はこの両区域の中に含まれる。
ただ、ウイキペディアが示す米国勢調査局のデータ分析によると、同原発の16km圏内の人口は2010年時点で、過去10年間で10.9%増加し、50マイル圏でも同10.3%増加しているという。
同原発は、1986年4月に旧ソ連のチェルノブイリ(現ウクライナ)原発4号炉が起こした爆発事故(INES評価でレベル7)、2011年の東京電力福島第一原発の炉心溶融事故(同レベル7)とともに、原発3大重大事故とされている。